王都防衛戦


「ヒイラギさん!!見えてきたっす!!」


 そうグレイスから声がかかる。


 俺はバッグから顔を出すとグレイスに問いかけた。


「わかった。獣人族の近くに着地できそうか?」


「大丈夫っすけど、自分攻撃されないっすかね?」


 グレイスが不安そうに言った。


「安心しろ。来た攻撃は俺が無力化してやる。」


「なら安心っすね!!じゃああそこに降りるっす!!」


 そこからグレイスは高度を一気に下げて着地の体勢に入った。そして、獣人族のすぐ近くに降り立った。


「わ、ワイバーンだあぁぁ!!」


 おっと、やはり驚かせてしまったようだな。グレイスに気がついた獣人族達が悲鳴をあげている。

次の刹那、大量の弓矢がグレイスに向かって放たれた。


「うわわわ!?」


「任せろ。」


 バッグから飛び出すと、グレイスへと向かって放たれた矢の雨をすべて弾き落とす。そして一瞬の安全を確保すると、シンたちに声をかけた。


「みんな出てきて良いぞ。」


 俺の声を聞いてバッグに入っていたシアを除いたメンバーが飛び出してきた。そして、シンが出てくると獣人族の中でざわめきが起こった。


「あれ、シン様じゃないか!?」


「シン様が来てくださったぞー!!」


 と、シンが来たことに歓喜する獣人達。どうやら彼は余程信頼されているらしい。


「シンさん、それじゃあ獣人族の方は頼みましたよ。」


「うむ、任せい。」


 シンには獣人族達の指揮を執ってもらう。彼の口からこちらが味方であることを告げてもらわないと、間違って攻撃されかねないからな。


 兵士たちのもとへと走っていったシンを見送って、ドーナとランの二人に声をかけた。


「二人とも、行けるか?」


「もちろんよ!!」


「大丈夫だよ!!」


「それじゃあ俺から離れるなよ?行くぞっ!!」


 背中を二人に預け、魔物の元へと走った。走った先では剣を折られた獣人族が、今まさにとどめを刺されようとしていた。


「こっちを見ろ。」


 横から急に聞こえた声に魔物は手を止めこちらを向いた。それと同時、掌底を振り向く流れに逆らわずに叩き込んだ。

 その結果魔物の首は勢いよく180度回転し、首の骨が折れ絶命した。


 一匹目の魔物を倒した時にシンの声が戦場に響き渡った。


「皆よ!!人間の者は味方である!!誤って攻撃をしないように気を付けよ!!」


 あっちの方は上手くやってくれたな。こっちも頑張らないとな!!


 

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