第3章

ジャガイモのガレット


 窓から朝日が射し込み、ハウスキットの外で鳥たちが鳴き始めた。


「朝か……。」


 シアたちを起こさないようにするりと布団から抜け出すと、コーヒーメーカーにスイッチを入れてコーヒーを淹れる。

 普段の朝と何ら変わらない行動だが、それがいい。変に違うことをすると感覚が狂ってしまうからな。


 熱いコーヒーを飲みながら、今日のこれからについて考える。


(獣人たちは果たしてこちらを歓迎してくれるだろうか……。下手すれば密入国者として追われる身になる可能性もある。彼らと対話するチャンスがあったら気をつけないとな。)


「おっと、そろそろ朝食を作らないといけないな。」


 考えることは山ほどあるが、今はそれよりも先に朝食を作らなければ……。


 コーヒーを飲み干し、コックコートを着て厨房へ向かった。


「今日はじゃがいものガレットにしよう。」


 ガレットとはフランスのお菓子や料理で使われる名称だ。『円形で薄いもの』という意味がある。


 じゃがいものガレットの作り方は極めて簡単で、潰す…または細切りにしたじゃがいもに片栗粉とチーズをまぶして円形に薄く伸ばして焼くだけだ。


「まずは皮を剥いて細切りにしよう。」


 じゃがいもの皮を剥いて薄くスライスしてから細切りにしていく。目安は千切り程度であれば大丈夫だ。


「後はここに片栗粉とチーズ、塩、胡椒で味つけしてフライパンで焼く。」


 普通は切ったじゃがいもは、デンプンを落とすために水にさらすのだが、ガレットではデンプンに火を通して固めないといけないので、絶対に水にさらしてはいけない。


 味つけしたじゃがいもをオリーブオイルを馴染ませたフライパンで焼く。こんがりきつね色に焼き色がついたら、ひっくり返して裏面もきっちり焼いていく。


「よし、これでいい。後はこの上に目玉焼きをのせて、サラダと一緒に盛り付けて…完成っと。」


 ガレットは焼き上がったら食べやすい大きさに切り分け、サラダと目玉焼きと一緒に盛り付けた。


「俺は目玉焼きは醤油で食べるが…一応ケチャップとソースも持っていくか。」


 目玉焼きは何をつけて食べるか……日本でも意見が分かれるぐらいだからな。

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