稽古中のハプニング
ドーナへと向かってランは構えをとる。
「じゃあいくわよ~。はっ!!」
ランの攻撃がドーナへと向けて放たれた。俺がやってみた手本をまねてドーナは攻撃を流そうとするが……。
「ッ!!あっぶないねぇ~。」
なんとか力の向きを変えることには成功したが、体勢が崩れてしまい、ランとぶつかりそうになってしまった。
「ドーナ、手だけで力を変えようとするんじゃなく自分の体も一緒に力に沿わせるんだ。」
「体も一緒に…わかったよ。」
そして、もう一度二人は向き合うと……。
「それじゃあもう一回行くわよ。はっ!!」
再びランがドーナへと拳を打つ。
それに対してドーナは、さっきとは違って早い段階でランの腕に手を当てると、アドバイス通り体を手をうまく使って完璧に力の流れを変えることに成功した。
「わわっ!!」
「こんな感じでいいのかい?」
「うん、今のなら文句はないな。後は色んな方向へ流せるように練習すればいい。」
「それじゃあ次はワタシ!!」
ドーナと役割を交代して今度はランが流す番になった。
「いくよ?」
「いつでも来なさいっ!」
ランはドーナが実際に自分の攻撃を流していたのを間近で見ていたのもあって、一発で攻撃を流すことに成功する。
「どう?」
「うん、良い感じだ。後はまた反復練習して慣れようか。」
そして二人が反復練習している光景を眺めていると、またシアがこっちに歩み寄ってきた。
「お兄さん!あれ、シアにもできるかな?」
「できるさ。」
「ほんと!?じゃあグレイスとやってみる!!」
するとシアはグレイスと一緒に行ってしまう。
「多分大丈夫だよな。」
一応シアたちの方も見ておこう……と視線を動かそうとしたその時だった。
「…っ!あぶない!!」
ドーナたちの稽古の様子に異変を感じ、すぐに飛び出す。その次の刹那には、ドーナの体がふわりと宙に浮いていたのだ。
彼女の体が地面に落ちる前にその間に入った俺は、咄嗟に彼女のことを受け止める。
「大丈夫か?」
「あ、う、うん。」
ドーナのことを下ろすと、彼女は顔を真っ赤にして俯いている。そんな彼女のことをランがいじり始める。
「あら、あらあら…そんなに顔を真っ赤にしちゃって。お姫様抱っこがそんなに恥ずかしかったのかしら?」
「う、うるさいよ。」
ドーナのことをからかっていたランは、チラリと俺の方に視線を向けてくると悪い笑みを浮かべた。そしておもむろに背中から翼を生やすと、ふわりと宙に浮かびながら俺の前に飛んできたのだ。
「はぁ、わかったよ。」
一回やってあげないと諦めてくれそうにないからな。
ランの考えを酌んで、俺は彼女のことをお姫様抱っこする。
「あはっ♪いい気分ね。」
「もういいだろ?」
「えぇ満足よ。ありがと。」
手から離れたランは、生やしていた翼をしまうと再びドーナと稽古を始めた。お姫様抱っこをしてあげてから妙に集中力が上がったような気がするが……きっと気のせいだろう。
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