決着


 それからどれぐらい時間が経過しただろうか……いよいよセドルの反応が怪しくなってきた。


「この辺が潮時かな。」


 纏っていたサンダーブレスを解除して拳を下ろすと、セドルは口から黒い煙を吐いて地面に倒れ込んだ。


 すると、審判のミノンがこちらに駆け寄って来る。


「せ、セドル?生きてる?」


 若干ひきつった顔でセドルの安否確認をしているミノン。会場もあまりの凄惨さに、シン‥と静まってしまった。


「気絶してるだけだ。殺しちゃいない。」


 脈を確認したミノンは一つ頷く。


「白級冒険者セドルの気絶を確認しました。勝者は銀級冒険者のヒイラギです。」


 彼女は決着の宣言を述べた……が、当然歓声など沸くはずもなく、シン……と静まり返った闘技場を俺は後にした。


 入口に戻ってくると、みんなが俺のことを待っていた。


「終わったよ。少しやり過ぎてしまったかな。」


「何言ってんのよ、あれぐらい痛め付けないと意味がないわ。」


「見ててスッキリだよ。これで生意気な鼻っ柱もへし折れたさ。」


 皆と話していると、闘技場の方からミノンがこちらに走ってきて物凄い勢いで頭を下げた。


「あ、あの……疑ってゴメンナサイッ!!」


「いや、そんなに気にしてないから大丈夫だ。頭を上げてくれ。」


 そう言うとミノンはゆっくり頭をあげ、こちらを向いて話し始めた。


「ありがとう。でも、まさか本当にセドルまで倒してしまうとは思ってませんでした。」


「だから言ったじゃないじゃないか。ヒイラギは強いんだって。」


「えぇ、目の前で見て初めて私も理解できたわ。もし良ければここで白金級冒険者の手続きもできるけど……。」


「いや、このままでいい。銀級ぐらいが気楽で丁度いいんだ。」


「そう……珍しい人。それなら、今回の湖の事件はあなたが解決したって報告書に書くのは不味そうね。」


「仮にそう報告書に書いたらどうなるんだ?」


「間違いなく銀級のままじゃいられない。白金級は確約されたも同然よ。」


「そうか……ならセドルの手柄にして欲しい。あいつも呼び出されたのに、急に仕事が無くなって困っただろうからな。やりすぎた謝罪として受け取ってくれ……と目が覚めたら伝えておいてくれ。」


「わかった。」


 よし、これでいい。存外ミノンが話が分かる人で安心した。少し疑い深いが……人間そのぐらいがちょうどいいのかもな。

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