ドーナの旧友ミノン


 金髪のポニーテールを揺らしてこちらに視線を向けてきた女性は、ドーナのことを見つめて口を開く。


「久しぶりねドーナ。」


「あぁ、久しぶりだねぇミノン。」


「元気そうで安心したわ。その後ろの方々は?」


「今のアタイの仲間だよ。」


「そう、また始められたのね。」


「とはいってもアタイは守られっぱなしさ。」


「ドーナが守られるなんて強い方々なのね。」


 そう言ってミノンという女性は椅子から立ち上がると、こちらへ歩いてきた。


「私はミノン。ここシュベールの冒険者ギルドの長よ、よろしくね。」


「俺はヒイラギ クレハだ。こっちの二人はシアと、ラン。縁あってドーナと旅をしている。」


 簡単な自己紹介を済ませた後、ソファーに腰かけるように促された。


「どうぞ座って?」


 ソファーに腰掛けるとミノンが紅茶を淹れてくれた。


「シュベールも大変そうだねぇ。」


「えぇ、特に今は湖の魔物が大量増殖しちゃって大変。今までこんなことはなかったのだけれど。」


 あっ、それウォータードラゴンのせいで……一応明日には普段通りになると思う。


「もしかして下に妙に冒険者が多かったのはそのせいかい?」


「事態の迅速な解決のために金級冒険者を集めたの。明日掃討作戦の予定よ。」


 明日にはウォータードラゴンが減らしてくれてるだろうし、すぐに事態は収まるだろう。


 しかしなぜだろう……変な胸騒ぎが止まらない。こんな時の嫌な予感ってのはだいたい当たるから怖いものだ。


「そ、その依頼っていうのは俺達でも受けられるか?」


「一応金級であれば受けられるようにはしてあるわ、貴方は何級なの?」


「……銀だ。」


 金級という冒険者の壁に阻まれ、いまだ銀級の俺はがっくりと肩を落とす。すると、ドーナがすぐさま補足するように言った。


「あぁ、一応言っておくけど……ヒイラギは依頼をこなした経験が少ないから銀級なだけさ。実力的にはアタイよりも圧倒的に強いから、戦力を集めたいなら適任だよ。」


「ドーナがそう言うなら大丈夫ね。もし参加するなら、討伐した魔物の証明部位をギルドに持ってきてね。」


 うん、たとえ忘れたとしても現在進行形で大量にマジックバッグの中に入ってるから安心だな。


「わかった、忘れないようにするよ。」


「さて、ミノンも顔も見れたことだしそろそろ行くとするかねぇ。仕事の邪魔して悪かったよ。」


「ううん、大丈夫。もうほとんど終わってるから、またいつでも来てね?」


「あぁ、そのうちね。またねミノン。」


 ドーナに続き部屋を後にした。


 兎にも角にも明日は湖に顔を出してみよう。何もなければそれでいいんだが……何か胸騒ぎがする。

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