二人の女神と対談


 差し出されたお茶を飲んで一息つくと、イリスが口を開く。


「神華樹の種を拾ったようですね?」


 どうやら彼女には、こちらの動向がお見通しらしい。


「あぁ、今育てているところだ。」


「ふふっ、早く大きくしてくださいね?」


「イリス~、そんなことより伝えなきゃいけないことあるでしょ?」


 水の女神メルがイリスに向かってそう言った。


「あらあら、そうでした。私としたことがついつい。」


「それ、イリスの悪い癖だからね?」


「ふふっごめんなさい。それで、今回伝えたいことなんですが……。」


 急に今の今まで朗らかだった空気が引き締まり、真剣な雰囲気になった。


「実は死の女神が本格的に行動を開始しました。」


「というと?」


「具体的に言えば獣人族とエルフ、人間への同時侵略を開始しています。最近、貴方が倒したシャドウタイガーという魔物も彼女の配下です。」


 アイツもそうだったのか……。


 それにしても3種族の同時侵略とは、それほど従えている魔物が多いんだろうな。カオスドラゴンみたいなのがたくさんいるって考えると悪寒が走る。


「今はまだそれほど力の強い魔物は使っていないので、大きな被害が出ているわけではありませんが…後々カオスドラゴンのような強い魔物が投入されると思います。」


「アイツみたいな強さの魔物がまた……。」


「貴方のステータスでも恐らく互角……もしくはそれ以上の存在も新しく生み出されているでしょう。ですので、貴方にはどんどんパワーアップしていただきたいのです。そのスキルを使って……。」


「私たち女神は直接下界に手を出すことはあまり出来ない。だから私達と繋がれるあなたに、死の女神の魔物の対処をお願いしたいの。」


「……話はわかった。だけど、俺は一緒にいるみんなには危険な目にはあってほしくはない。だから、降りかかる火の粉を払う位の協力しかできないことは理解して欲しい。」


 もし、この世界で1人で旅をしているなら別に自ら赴いても構わない。だが、嬉しいことに俺には同行者がいる。彼女達を危険に晒したくはない。


 そんな俺の考えを理解してくれたようで、イリスは一つ大きく頷いた。


「もちろんです。」


「少しでも協力してくれるだけ助かるわ。人間で私達と交流できるのはあなただけだから。」


「えぇ、本当に助かりますね。」


「それ……気になったんだが。交流できるのが俺だけっていうのは……いったい?」


「あなたはイリスの影響を受けて、少し神気が魂に入っているから私達が見えるってわけ。神気を魂に持ってる人間は他にはいないのよ。つまり私達が頼れるのはあなたしかいないってこと。」


 メルの説明を受けてやっと、俺は理解した。自分がいったい、どういう状況に置かれているのかを……。

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