レッツフィッシング!!


 仕掛けを投げてすぐに、シアの竿に当たりがきた。


「わっわっ!!お兄さんすごい引っ張ってくるよ!?」


「おぉ、一番の当たりはシアか。それじゃあ負けないようにシアも竿を引くんだ。」


「うんわかった!!ん~っ!!」


 シアが力を込めて引っ張ると、どんどん大きな魚影が陸へと引っ張られてきた。


 そして、バシャアァン!!という音とともに水面を跳ねて陸へとうち上げられたものは…………。


「うん?こいつは……。」


 この特徴的な長い角に鋭い牙……間違いないソードフィッシュだ。

 こいつが増殖している魔物なのか?


「あれ?このお魚さん……昨日シアがとった気がする。」


 あれシアが採ってたのか。よくこんな危ない魔物を捕まえられたものだ。


 そして、水から釣り上げられて、びちびちと跳ねていたソードフィッシュだったが、どうやらこちらを敵と認識したようだ。


 シアの隣にいた、一番体の小さいグレイスにその鋭利な角で突進していったのだ。


「えいっす!!」


 しかし、無情にもあっさりとグレイスの前足で頭をはたかれ、ソードフィッシュは地面に伏した。

 体格差があるからといっても、グレイスはワイバーンだ。実力に差があったんだろう。


「あ、ワタシにもかかったわ!!」


「アタイのにも来たねぇっ!!」


 二人の竿にも当たりが来たようだ。


 実力のある二人は、軽々とソードフィッシュを釣り上げ速攻で倒していた。


 それからはもう入れ食いで、3人は次々にソードフィッシュを釣り上げていた。


 しかし一方俺の竿には、一向に当たりが来る気配がない。


「つ、釣れない。なんでだ?」


 隣で入れ食い状態の3人に目をやって、一人俺はため息を吐くのだった。




 一方その頃湖の中では……。


 ソードフィッシュの群れが投げ込まれる餌を奪い合い、争っていた。


 しかし、一つの餌には見向きもしないし、近付きもしない。


 その1つの餌の先からは、確実な死の予感がしているのをソードフィッシュ達は敏感に感じとり、残る他の餌に向かうしか無かったのだ。


 その餌はヒイラギのものである。彼の圧倒的ステータスがソードフィッシュ達に伝わり、彼らの生存本能が意識的にその釣り針を避けているのだ。


 そんなことを知るはずもないヒイラギは、自分の竿に当たりが来るのを待ちながら、シア達が釣ったソードフィッシュをひたすらバッグに放り込んでいくのだった。

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