サンドイッチにハム

 作中に「誰かがパンにハムを挟まなければサンドイッチにはならない。最初からハムが挟んでであるわけではない」といったことが述べられ、これがヒントになって真相に気づくというくだりがあります。

 どうもこのたとえが私にはフィットしませんでした。

 パズル小説ではないので、手がかりがどうのと突っつくのも野暮ですが、ここは評価が厳しくなるところ。

 犯人がいなければ死体は転がらない。必ず犯人がいるのだ、ということでもなさそうで。


 この作品は「犯人当て」の本格ミステリではないので、メインの仕掛けについても、そういった流れでとらえないといけないのかもしれません。

「この登場人物が犯人なんだよ、ビックリしただろう」という無邪気な作者のニヤニヤ笑いはなく、ただひたすらシリアスに現実社会や人間を見据えた結果、導きだされた犯人像がきわめてミステリと親和性が高かったというだけなのかもしれません。

 この五巻のアンソロジーにも登場するある作家のアレと仕掛けは同じなのですが、生まれたところも目指すところも異なるように感じるのです。

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