第23話 部室

放課後資材が次々と校庭に運び込まれる。


「えっと・・・今日の部活動は・・・」


顧問としてやって来た優香は資材の山に困惑する。


「本日は部室を建てますわ」


「大丈夫・・・なのこれ?」


「資材費は軍に請求致しますし、わたくしは建築に関する資格は所持しておりますので法律上の問題はございません」


「お前何者だよ」


「基本的な工事は私たちで行いますが、内装や外装機材の運び入れなどはお父様の会社にお願いしております。金曜日までに基本的な工事を終わらせて土日、休みの間にその他の仕上げを業者が入って仕上げる手はずになっておりますのでそのつもりで。


「そ・・そうなのね」


「で・・・みなさんの希望をお聞きしたいのですが」


「俺は・・・特に希望は無いなぁ」


「わ・・・私はキッチン・・・やっぱり駄目かな・・・あはは」


「漫画部屋ほしいな~」


「一応沙耶と楓の希望も教えて下さいまし」


「静かな書斎。」


「漫画部屋と一緒だな!」


「別」


「私も千里お姉ちゃんと同じでキッチンがいい」


「楓ちゃん! やっぱりキッチンは必要よね!?」


「分かりましたわ。善処致しますわ」


「キャロルお前の希望は無いのか?」


「敷地が30坪程度しかありませんので、ミーティングルームと仮想式戦略盤と武具製作研究所くらいですわね。すべて最低限の広さしかありませんが・・・5階建てにすれば何とか入ると思いますわ。わたくし個人的には男女別のシャワールーム、があればよろしいかと」


キャロルはパソコンを取り出し設計図を作り始める。

30分ほど経った後


「出来ましたわ。1階が男性のシャワールームに、ミーティングルーム2階が女性シャワールームにキッチン、3階には武具製作研究所、4階には仮想式戦略盤、5階が書斎と物置でどうかしら?」


「キッチンあるの!? やったね!」


楓と千里は手を握りあって喜んでいる。


「コーヒーなどを淹れるためですわ。オーブンなどはありませんわ」


「漫画部屋は?」


「却下」


「何でだよ! んじゃ沙耶の書斎に置かせてもらう」


「嫌」


「とにかく施工致しますわ。週末までに仕上げますわよ」


現場監督のキャロルに怒鳴られながら一同は何とか週末までに目的の所まで工事を進めた。


「では皆さん週明けのを楽しみにしておいて下さいまし」




ー週明けー


放課後集まった一同は目の前の光景に戸惑う。


「・・・完成してるな・・・」

「うん・・・いい出来だと思う・・・けど」

「あはは・・・」

「時代錯誤」


「ふぅ・・・やはり満足のいく出来栄えですわ!」


「キャロル・・・クラスの噂とかで薄々気が付いてはいたが・・・何で瓦なんだよ!?」


「五重の塔をイメージ致しました。 ああ・・・美しいですわ」


恍惚の表情を浮かべるキャロル。

そのあまりに満足そうな表情に一同は引きつつも文句は言えないでいた。


「さ・・・順序は少し前後いたしましたが・・・始めますわよ!」


「え?何を?」


「決まってますわ・・・餅まきですわ! すでに屋上に用意してありますわ! これが終わるまで中には入れませんわよ!」


「マジか・・・」


無事餅まきが終わり自分が投げた餅を自分らで拾う悲しい作業を終わらせ中へと入る。


『おお!』


中に入った一同は驚嘆の声をあげる。

内装は綺麗に施されており想像を上回る出来栄えに感動していた。


「ま・・・最低限でもこの位は必要ですわね」


「外見はともかく中身はすげぇな!」


「ちょっとどういう意味ですの? 守」


「上にも上がってみようぜ」


2階3階と順に部屋を確認し屋上へたどり着く。

屋上には広い物置スペースがあり、奥のほうには小さな書斎が設けられていた。

沙耶は目を輝かせ無言でまっすぐ書斎の方へ向かい、中に入る。


『ガチャ』


「ちょっと待ってくださいまし! 沙耶貴方鍵をかけましたわね!? 今から1階でミーティングですのよ!」


ドンドンとドアを叩くキャロル。


「・・・」


「プライバシーを重視して鍵をつけたのは失敗でしたわね・・・。とにかく一度1階で今後の会議を致しますので集まって下さいまし。千里は皆さんのコーヒーをお願い致しますわ 」


「はい! 行こう楓ちゃん」


千里は楓の手を引きコーヒーの準備のために2階へ向かった。

1階の会議室にてみんなが集まる。


「まったく・・・沙耶はまだ降りてきませんの!?」


「まぁ仕方ないだろ・・・会議を始めようぜ」


「仕方ないですわね」


コーヒーを少し飲みキャロルは話を進める。


「では会議を開始します。会議の内容は今後のスケジュールにつてですわ。とりあえずの目標は7月夏季休暇に入る前に行われる定期昇格試験に向けての訓練を行いますわ。7月の試験内容について黒田先生お願い致しますわ」


優香はコホンと咳払いをする。


「7月に行われる試験内容は入学時行われた基礎検定に加え、ペアと2人~6人で編成されたチームによって学生同士で勝ち上がりの模擬戦闘を行ってもらいます。これに優勝すれば基礎階級に加え1階級の特進が行われますので毎年皆さんこの特進を狙い鎬を削ります」


「黒田先生ありがとうございました。私はこの5人でチームを組みたいと思っておりますわ。いかがでしょう?」


皆少し驚いた様子で戸惑った顔をしている。


「俺たちは構わないんだけど・・・キャロルお前はいいのか?」


「急ごしらえのチームより連携のとれたチームの方が勝率は高いですわ。わたくしも元とは言えど特Aでしたので沙耶が居れば特Aクラスが2人守と千里も7月までにはかなりの戦力になるはずですし4人で連携さえ取れれば、優勝も狙えると思いますわ」


「あれ、俺は?」


「大地は今のところ戦力外ですわ」


固まる大地。ポンッっと守が肩を叩く。


「今のところと言うのは貴方に施された術の解術の進行次第という意味ですわ。7月までには20%程度の解術が出来ると思いますが、やってみないと実力が分からないのであてにはしておりませんの」


「解術出来るのか!?」


「目下研究中ですが7月までには多分」


「やったぜ! 流石キャロル様」


「姫とお呼びなさい」


「いや・・・それはちょっと・・・」


「5人は決まっているとして、後の一人は確定ではありませんが剣を予定しております。帰ってくれば・・・ですが。もし帰って来ない場合は 本田ほんだ ふとし君をお誘いしてみますわ」


「太っていうと入学時ドスコイって言ってたあいつか?」


「ええ、このパーティは前衛が不足していますわ。それにあの方は今はソロで活動をしているはずですのでパーティーメンバーを欲しているはず、6月までに剣が帰ってこない場合は私が声をかけに行きますわ」


「キャロルちゃん。太君なら中学の時同じ学校だったから私が行こうか?」


「それはありがたいですが、まずはリーダーであるこのわたくしが直々に赴くのが礼儀かと。断られた場合お願い致しますわ。では皆さんとりあえずいまから7月まで休んでいる暇はありません事でしてよ、よろしくて?」


『おー!』


7月の定期昇給試験を目指し動き出す。


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