改変:桃太郎~おじいさんはかわやで選択を迫られ、おばあさんは山田さんの家へしばかれに行きました~

れん

第1話おじいさんはかわやで選択を迫られ、おばあさんは山田さんにしばかれに

あるところに、古稀が見え始めたおじいさんとおばあさんが住んでいました。


子供は独立して家を離れ、孫も生まれ、長く連れ添った夫婦は老後を悠々自適な年金生活を過ごしていました。


共通の楽しみは一緒に食べる食事と間食と子供家族との団欒。


そんな老夫婦がある日、頂き物の桃を二人が食べると……とても不思議なことが起こりました。


瑞々しい桃の果汁が乾ききった肌に潤いを与え……なんと、おじいさんとおばあさんは20代まで若返ってしまったのです。


子供達よりも若返ったおじいさんは若返ったおばあさんを見ると耳まで赤く染め、股間を押さえながら大急ぎでかわや(トイレのこと)に駆け込みました。


おじいさんは大きな選択を迫られています。


おばあさんは若い頃は町一番の美女で、とても有名な女性でした。


家事万能でお淑やか。それでいて文武両道。

襲われても穏やかにほほえみながら関節を決め、ナニかをへし折ってお仕置きする様から「俺もへし折られたい」という変態男性を量産する鋼鉄乙女。


男は誰もが恋をする。女もあれには勝てないとため息をつく。そんなパーフェクトヒューマンでした。


並み居る変た…………猛者を退けて、鋼鉄乙女のハートを射止めて愛でたく夫婦となったあとも

、声をかけてくるモノが後を絶たず、おじいさんはたいそう苦労をしましたが、おじいさんもまた愛する女のためなら命を投げ捨てられる猛者。


投げ捨てるまえにだいたいはおばあさんに粛正されましたが、二人は街でも評判の誰もが羨む仲良し夫婦。


そんな二人も子を成し、育て、巣立っていくのを見届けていくうちに、男と女という意識は薄れていきました。恋は家族愛に変化していったのです。


そして、性愛の炎は徐々に小さくなっていきました。

しかし、決して消え去ったのではありません。


若返った美しいおばあさんを見たことでおじいさんの中で小さな種火となった性の火は燃え上がり、炎となってほとばしる熱が一点に集中。


熱を失い、堅さを失い、雄としての役割を終えてただの排泄器官とかしていた男の象徴に活力が蘇り、腹につくほど猛々しくそそり立ったのです。


おばあさんを抱きたい。

熱烈に、性的な意味で。


燃え上がりたい。

性的な意味で。


そしてこの滾る熱い奔流を注ぎ込みたい。

性的な意味で。


しかし、最後にいたして○十年。


このまま気持ちまで若返ったことであふれ出しそうな情欲を、若気の至りでがむしゃらに腰を振ったあの時のように……盛りのついた猿のようにおばあさんにぶつけて良いのか。


お自慰さんは悩みました。


そんなおじいさんの苦悩を華麗にスルーしたおばあさんは、ご近所のお友達で、ずいぶん前に旦那さんを亡くした山田さんの元へ、桃のお裾分けに向かいました。徒歩で。


この山田さん、ただの友人ではありません。

被虐嗜好のあるおばあさんの良き理解者であり、秘密のパートナー(愛人)でした。


おばあさんはおじいさんに隠れ、ずーーっと、山田さんの元へ、しばかれにイっていたのです。


おばあさんは「私は武力的に強いかもしれない……でも、本当はいじめられたい……けど、こんなこと……優しいあの人にはいえない」「うちに秘めたこの恥ずかしい願望をさらけ出せない……」「私は臆病だから、夫を裏切るなんてできない。浮気は絶対嫌。愛する家庭があるの。でも、この火照り、抑えられない……どうしたらいいの…………」と友人である山田さんに相談していたのです。


それならと、「男よりも女を愛でたい、いじめたい」という願望を持っていた山田さんは、にっこり笑って、おばあさんを優しく受け入れたのです。


余談ですが、山田さん……名を山田頼子(よりこ)と言い、SM界では苛烈なしばきなのに絶妙な力加減で痛みの中に快感と愛情を感じさせる鬼才……通称、『しばきの鬼子』と呼ばれる鞭の達人。老いてなお数多の○を飼い……調きょ…………愛する、愛の伝道師。


旦那さんは鬼子さんの一番の○であり、金回りは良いが横柄な態度と大きな声で騒ぐ人でした。


しかし、こんな言葉があります。


「雉も鳴かずば打たれまい」

「愛を持って接すればどんな○とも解りあえる」


鬼子さんの夫は成功者であり、成金であり、頼子さんによって愛に目覚めし者。ドMに目覚め、女王様に打たれるために鳴き、打たれて喜び、よく喘く人だったのです。


なので、鬼子さんがおばあさんを愛する間も「はぁはぁ……ほ、放置プレイとNTRプレイ……あぁ、ご褒美です! ありがとうござ、へぶぅ! たっ、たまらん!!」と(鞭を)受け入れていました(そして恍惚な顔で吹き飛ばされていました。周りはどん引きです)


その結果、文字通り昇天してしまったというのは本人の名誉のために言わないでおきましょう。


そんな若き日からずっと続いている秘密の関係は、○十年経った今もなお続いています。


お互い墓場まで持って行こうと誓った秘密。


お自慰さんがかわやで悩んでいる間、おばあさんもまた、悩んでいました。


自分だけ若返ってしまった後ろめたさと、若返ったことで燃え上がる熱情。愛されたい欲求と、抑えられない欲望。


そして、原因であろうこの桃を山田さんにも与え、若返ってもらい、めくるめく快楽の渦におぼれて酔いしれたいと。


おじいさんとも繋がって、熱い奔流をお腹の奥で受け止めたい気持ちと、おじいさんに隠し、おじいさんでは満たしてもらえない情欲……おじいさんと山田さんの狭間で、おばあさんの気持ちは不規則に揺れ動いていました。


それでも足は止まりません。

それがおばあさんの答えでした。

気がつけば、山田さんの家の前。

悩んでいても、体は正直だったのです。


もう、答えはでている。

意を決して、おばあさんは山田さんを呼びました。


「ごめんください。山田さん、いらっしゃいますか?」

「はい……えっと、どちら様でしょう? ご紹介の方ですか?」


家から若い女性……山田さんの息子のお嫁さんが応対します。


「いいえ、私です。友人の婆です」

「ご冗談を。あの方はこんなに若くありません。他人の名を騙るようなお方では、御義母様の寵愛を受けることはできません。お引き取りください」


困ったことに、おばあさんは若返りすぎたために、気づいてもらえませんでした。


しかし、おばあさんはひきません。


「では、こちらをご覧ください」

「……失礼します。こ、これは!!」


おばあさんが手首を見せるとそこには、小さな山のマーク。山田さんの寵愛を受けるものに刻まれし証し。その中に刻まれた番号は初期のもの。


「御義母様に、確認していただきます。しばしお待ちください」


信じられないという顔で、義娘さんが家の中に戻ると、老婆を伴って戻ってきました。


「ほおぉー、本当に若返っているじゃないか」

「驚かせてしまい、申し訳ありません。お時間、よろしいですか?」


「いいよいいよー。奥でゆーーっくり、聞かせてもらおうか?」

「はい。では……」


慣れた様子で鬼子ハウスに上がるおばあさん。

その動きを見て「ああ、あの人だわ……」といまだに信じていない義娘さんも納得し、家にあげました。

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