第78話 神の助言

ファシュファルは話を続けた。


「もっと助言がしたいのは山々ですが、私がこうして直接あなたと話をするのは、規則としてはギリギリの行為なのです。

 そのため、頻繁にはできません。

 ただ、直接の会話はしていませんが、私とあなたが無意識の層でつながることは、これまで何度かあったのですよ」


「無意識の層…?」


「あなたが大魔法を使えるのはなぜか。

 それは私があなたに知識を渡しているからです。

 その時、無意識の層で私たちはつながっていたのです」


思えば、大魔法を使う時は急に知識が沸き上がって来る感覚だった。

それでも、ヒロは納得できない。


「無意識の層でつながっているなら、言葉でいろいろ教えてくれてもいいじゃないですか!」


「いいえ、言葉という意思疎通の手段は、時間がかかります。

 知識を私から直接あなたに送るほうが、とても効率的ですから。

 大魔法を使うという差し迫った時に、いろいろと言葉で説明されても困るでしょう?」


「確かに…それはそうですが…

 では、なぜいまはこんな会話によるコミュニケーションを?」


「今のあなたとは、この意思疎通の仕方が一番良いと考えたからです。

 私は本来なら、姿もありません。

 ですが、人間と会話するため、こうして人間のような姿をして会話をしています。

 もっともっと、厳かな、まさしく神!と言う感じの姿になることもできるんですよ?

 それに、もっともっと神っぽい話方で接することだって、本当はできるんですよ?」


ヒロは、本当かよ、と思いつつ答えた。


「なぜ私と話すのに、今のあなたの姿で会話することがいいと思ったんですか?」


「それは、あなたがそう望んでいるからです。

 人の姿のほうが話しやすいとあなたが思っているのです。

 神っぽいおじいさんより、きれいな女の人のほうが話しやすいと思っている。

 多少フランクな話し方のほうが、話しやすいと思っている。

 人間っぽい部分がある方が、話しやすいと思っている」


言われてみると、神々しい爺さんが厳かに話すより、今のファシュファルの方が話しやすい。

ファシュファルは言葉を続けた。


「人によって、私は接し方を変えているのです。

 そして、この方法が、今はあなたに一番適していると考えたのです」


ヒロはその言葉を聞いて、何やら考えはじめた。


「私に…適している…

 一人一人に…適した方法…」


ヒロの頭の中に、状況の打開策が霧を腫らすように明確になって行った。


「なにか、思いついたようですね?」


「…はい。

 あなたの言うように、プロジェクトマネジメントの知識で、対応できそうです」


「それは良かった。

 準備は良いですか?元いた場所に、戻します」


ヒロは、静かにうなずいた。

ヒロは光に包まれ、もとの場所へ戻っていった。


ヒロを見送ったファシュファルはそっと胸をなでおろす。


「ふぅ。

 なんか、適当に話してたら上手くいったわ」

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