第67話 ギルド長のお願い

翌日、ヒロはいつものように定例を終え、ギルドの会議用に使っている一室に一人で残っていた。

メグやジュドーと言った、優秀なメンバーにもっとパフォーマンスを発揮してもらうにはどうしたらいいだろうか。

そんなことを一人、考えていたのだ。


ガチャッ


いきなり、ドアが開く音がした。

考え事に集中していたヒロは、ビクッとしてドアの方を見る。


「ヒロくん、ここにいたのかぁ」


ヒロの上司である、ギルド長のジューマンであった。

ひょこっとドアから顔をだした姿は、さながら親指のようだ。


「あ、ギルド長。

 何かありましたか」


「いやぁ、ヒロくん。

 頑張ってくれてるみたいだねぇ。

 そんなヒロくんに、折り入って相談があってだね…」


ジューマンからはだいたい丸投げや無茶ぶりが来る。

ヒロは嫌な予感がした。


「は、はい。なんでしょうか」


「キラーマンティスがね。

 最近増えてるらしいんだって」


「らしいですね

 私も、森で見たことがありますし。

 ゾームの影響で住処を変え、北上してきてるのかもしれません」


「うん、そうなんだよねぇ。

 でね?

 あの魔物…ゾームだっけ?を倒す兵器を作ってるでしょ?

 そこに、ちょちょっとキラーマンティスも倒せる感じに変更加えてくれない?

 キラーマンティスもゾームも、虫型の魔物でしょ。

 ちょちょいといけるでしょ、ちょちょいと」


何を言い出すんだ、この上司は。

ヒロは思った。

同じ虫型でも、キラーマンティスとゾームでは全く違うモンスターだ。

ヒロたちはあくまでもゾーム討伐の仕組みを作っているのだ。

キラーマンティスなんて、今更言われても困る。


「えっと、それは一体全体、どういう理由からですか?」


「えっとねぇ。

 依頼があってね。

 キラーマンティス討伐のね?

 で、ヒロくん兵器作ってるから、その中でできたら、楽でいいなぁって思ってね?」


ファシュファルといい、ジューマンといい、ヒロに指示を出す奴らはなぜこうも適当なのか。

いや、グレンダール総指揮官は例外か。

そんなことを思いつつ、ヒロは答えた。


「いや、それは難しいです。

 新しい要件が入って来ると、費用も増えますし、なによりも再度兵器や討伐方法の設計が必要になります。

 スケジュールが…伸びてしまいますよ?」


「いや、そこを何とかしてよ」


「私もギルドに来る依頼を効率的に捌けたら、と思います。

 要望にお応えしたいのおは山々ですが…グレンダール総指揮官にどう説明したらよいやら…。

 キラーマンティス討伐をゾーム討伐と一緒にすべき必要性を、ギルド長が一緒に、グレンダール総指揮へ説明してくれるのであれば、可能かもしれません」


ジューマンが、めんどくさそうな顔をした。


「いや、それは…

 この案件の担当はヒロくんだからねぇ。

 私が出ていっちゃ迷惑かなぁと思うんだよねぇ」


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