3章 暫定対策すべし
第48話 コスト問題
ヒロは机に向かい、悩んでいた。
コストという問題に直面しているためだ。
昨日、グレンダール総指揮官へ調査フェーズの報告と、次のフェーズであるゾーム討伐の仕組み設計フェーズの開始承認を得るため、王宮へ足を運んだ。
事前に次のフェーズの計画を伝えるという点をヒロはグレンダールに話していたため、王国の経理担当が報告の場に同席していた。
オールバックで、眼鏡をかけた神経質そうな男だ。名前はリーガルという。
プロジェクトチームとしてその場に居合わせたのは、ヒロとランペルツォンである。
ヒロが報告と、次のフェーズの説明をした。
兵器の話に入った時、経理担当のリーガルが口を挟んだ。
「私は、そもそもこのゾーム討伐に兵器が必要というのが納得できません。
冒険者で討伐ができたのでしょう?
ゾームの調査も一流の冒険者へ依頼して費用がかさみましたが、なぜわざわざ国庫から費用を出し、兵器を作る必要があるのです?」
「おっしゃる通り冒険者や王国の兵士、魔導士でも討伐は可能でしょう。
が、ゾームは強力なモンスターです。
全て人力で対応すると、けが人や死人が多く出てしまいます」
「ジュドー殿やメグ殿と言った、強い冒険者に頼れば、死人も出ることなく倒すことはできるのではないですか?」
「ゾームを討伐する力を彼らは持っています。ですが、サムソン村は10体以上のゾームに襲われています。
複数のゾームを同時に相手するとなると、いかに高レベルの冒険者と言えでも危険だと考えています」
「高レベルの冒険者は王都に、他にもまだいるでしょう。
集めれば、複数のゾームにも対応できるのでは?」
「高レベルの冒険者は需要がそれだけ高いですから、依頼するための費用が高くなります。
ゾーム調査でかかった費用同様…。
長い目で見れば、兵器を作る方が安くつきます」
「国の危機ということで、国の命令として低賃金での防衛命令を冒険者にだせば、費用は抑えられます」
なんだそれ。治安維持法か?
ヒロは思った。
グレンダール総指揮官が助け舟を出してくれた。
「リーガルよ。そんな、奴隷のように冒険者を扱ってもやる気を出してはくれまい」
ヒロもそう思った。
マーテルのように自分の利益が第一の人間もいる。
まともに戦わない人間も出てくるかもしれない。
だが、リーガルは折れない。
「グレンダール総指揮官。そうは言いますが、私の使命は費用が抑えられるものは抑えることなのです。
やる気なんて良く分からないものが原因で費用が上がるというのは、私には了承できません」
結局、リーガルを納得させることはできなかった。
だが、ヒロは焦りつつも次の満月への対策費用を確認する。
「分かりました…次フェーズの費用については再検討します。
ただ、次の満月はもう2週間後です。
そこへの暫定対策は、ゾームの倒し方を冒険者たちへレクチャーし、討伐依頼する他ありません。
その費用については、了承いただけるでしょうか?」
リーガルがメガネを右手でつまみ上げながら答えた。
「高レベル冒険者への依頼が本当に必要であるかが分からない状況ですので、一般レベルの冒険者への依頼、および少し王国兵を充てるということで初回のゾーム対策費用とするのであれば、許容できます」
「了解しました」
少し悩ましい表情をするヒロに、グレンダールが話しかけた。
「ヒロ殿。
すまないが、次フェーズの費用について再度検討をしてきてくれ。
リーガルはシュテリア国王からも信頼が厚い。
ゾームの調査は他に方法が無いということで無理やり通したが、本来は私の一存では費用に承認を出すことはできないのだ」
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