第18話 プロジェクト目的と達成条件を決めるべし

ヒロはギルドに戻った。

まずは、ジュドーとランペルツォンと、プロジェクト発足の相談を始めるためだ。


とは言え、ランペルツォンはヒロとジュドーが座る机から距離を置き、腕組みをして下を向いている。参加する気がないように見える。


めっちゃ嫌われている…。

ヒロは悲しく思ったものの、とりあえずはそのままにした。


卓を囲んでいると、レインが近寄ってきた。


「今日は、もうギルド事務所、締めちゃいますよ?」


いつしか、ギルドの営業時間が終わったようだ。

ヒロは、この王国民の命がかかる案件に対し、今日は残業を覚悟した。


ヒロはレインに答えた。


「少し、ジュドーさんと話してから、私は帰ります」


「特別な依頼の件、ですか?」


「そうなんです。今から、ジュドーさんとどう進めるか話そうと思って」


レインは、目を輝かせて言った。


「私も、聞いていいですか?

 特別な依頼って、なんかかっこいいですし!」


好奇心旺盛な子だな、とヒロは感心した。

レインはギルドのことを良く知っているし、もしかしたらプロジェクトに必要になるかもしれない。

話に入ってもらうことにした。


「分かりました。ぜひ、話を聞いてください。

 ジュドーさんにはおさらいになりますが、依頼内容から話しましょう」


ヒロは、王宮で聞いたことを箇条書きで紙に書きつつ、二人に説明した。

この世界の言語が、なぜか日本語で助かっている。


「…と言うわけで、プロジェクトを発足します」


ジュドーとレインの顔にクエスチョンマークが浮かんだ。


「ぷろじぇくと?」


「あ、この王国にプロジェクトという言葉はないんでしたね。

 すいません。

 こういう、何か目的を達成するために、チームを作って行う活動を、私の元居た場所ではプロジェクトと呼んでいました」


レインが反応する。


「へ~。なんだかかっこいい呼び方ですね」


「この、プロジェクトがうまく進むように行動をとる役割の人を、プロジェクトマネージャーと呼びます。

 私は、このプロジェクトマネージャーが元々の仕事でした。

 だから、今回のゾーム討伐の件も、私がプロジェクトマネージャーをしようと考えています」


ジュドーが今度は答える。


「おお、なんだか頼もしいな。

 具体的にそのプロジェクトとやらを始めるには何をするんだ?

 ゾームをぶったおすための武器調達か?」


「いや、まずは、プロジェクトの準備です。

 具体的には、目的とその達成条件を決めることと、チーム作りですね

 。」


「なんか、地味だな!」


ジュドーが無邪気に言った。


「ええ、プロジェクトとは、地味な作業の積み重ねなのです」


冒険者たちの戦いのような派手さはない。

だが、ヒロはプロジェクトマネジメントの知識で戦うことが、この世界で今できる唯一のことだ。


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