第3話 ジョセフ、荒野で何を見る!(その3)

 辺りは暗くなり野宿をすることになったのだが荒野で焚き火を焚きヨロの寒さを凌いでいた。


 「ジョセフさん、やっぱり私には何故あのおじいさんを助けたのか理解ができません!」


 「……久しぶりにに出会った気がしたからだ……」


 「…………?」


 ケイトは何故ジョセフが老人を助けたのかを疑問に思っており、それが反乱軍の人間であることを指摘するも物怖じせずにジークのメンバーと戦ったことが理解できずジョセフは人としての心を持っている老人を見ることでこのような人達が大勢いてくれればと思っていた。ケイトはジョセフの言葉の意味を理解したのかは分からないが暫く考え込んでいる様子で、リサは微笑みながら俺の傍らに座っていた。


 「……フフッ、ジョセフ様はこの8ヶ月で変わりましたね。でも、向こう見ずに行動するところは初めて会った時と変わらないものですね」


 「リサがいたからこそだよ。人間ってのは出会いや環境で変わると言うだろ?」


 「あの~、リサさんとジョセフさんは初めて会った時からかなりのバカップルを見せつけてますよね~」


 ケイトはジョセフとリサが楽しく会話しているのに嫉妬をしているからなのか皮肉にも嫌味を言う。


 「そうでもないさ、リサを助けたからって理由でいきなり婚約させられた時はこんなに仲は良い方ではなかったしこうやって仲が良くなったのも冒険者を始めてからだよ……」


 「リサさんの性格考えたらジョセフさんにいきなり婚約しちゃうのも無理もないですね。私ならリサさんのようにジョセフさんに猛アタックできる勇気なんてありませんもの……」


 「ケイト、もしかして俺のこと好きなの?」


 ジョセフは真顔で思わずケイトに尋ねるとケイトは顔を赤く染め焦燥ぶりを見せつけ顔を勢いよく横に振っていた。


 「そっ……そんなことありませんよ……だって、ジョセフさんはリサさんと婚約しているわけだし私みたいな女がジョセフさんのような美男子に好意を寄せているなんて……」


 「私は別にケイトさんなら私の次にジョセフ様の婚約者になっても構いませんわよ?」


 リサはケイトの心を読みおちょくりケイトの頭から湯気が湧きだし気絶してしまった。それを見た老人は「若いってのはいいのう」と笑顔を見せたあとに眠りにつきジョセフとリサは火にあたっていた。


 「ジョセフ様がいなければ今頃私はこうやって生きていることもできなかったのでしょうね……」


 「それは俺だって同じさ。リサはどんなことがあっても俺のことを信じてくれたじゃないか。修行の旅に出たときからリサには助けてもらってばかりでこうやって仲間も増えているわけで」


 リサとの出会いから本当の愛を知り、本来持っていた人間らしい心を取り戻しつつあるのだが、魔人族や魔物との戦いで何度も死の境地に辿り着くことにより人間としてのリミッターを解除していることへの恐怖に駆られてもいた。


 そう、いつか心が暴走して狂戦士のように敵味方見境なく破壊を望むのではないかと……それにより愛する者を失うのではないかと考えるとジョセフは自分が人間であり続けられるのか分からずにいた。

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