第31話 2回目の無報酬クエスト(その5)
ゴンザの攻撃はジョセフ達が立ち止まろうとする暇すら与えてくれず、まともに指示すら出せない状況でいた。
「お前達人間はここで死ぬのだ」
そう言いながらゴンザは怒声をあげていた。
このまま無抵抗なままジョセフ達もやられるつもりはなく、眼前にいる化け物を倒す方法があるに違いないと模索していた。
「イチかバチかやるしかないな……光魔法『スパーク』」
青白い電流がバチバチと俺の左手を覆っていた。あの化け物の脳神経を狂わせられればいいのだが今のジョセフの魔力で奴に通用するのかは疑問に感じてもいた。
ジョセフは『スパーク』で覆われていた左拳でゴンザの頬にパンチを一発入れることに成功した。
ゴンザは殴られた頬をさすりながらニヤリとした表情を浮かべていたのだ。
「う~ん、さっきの攻撃は少し痛かったぞー。だがその程度の攻撃ではこのわしは倒せんぞ?」
(やはりゴブリンや並の人間と違い俺の魔法攻撃では倒せないのか?1秒でもいい、奴の動きさえ止めれれば)ジョセフはこのままでは全滅することを脳内に過らせていた。
「腹の足しにもならなかったが中々楽しかったぞ。さらばだ人間!」
ゴンザは奇声にも似た声をあげ右拳を振り下ろした。
「ジョセフ!」
テレサがジョセフのもとへと駆け寄ろうとしていたが距離もある程度あったため間に合いそうになかった。
「なぬっ!?」
ジョセフは(ここまでか……?)と思った瞬間、ゴンザの体が硬直し始めていたのだ。
「きっ、貴様!このわしに一体何をした!?」
「光魔法『スパーク』でお前の脳神経を狂わせたのさ」
「そっ、そんな…使…いっ、方が…」
ゴンザは言葉も発せられないほどに麻痺が生じ、これが攻撃のチャンスだと思ったジョセフはマリーに魔法を発動するように声を張り上げた。
「今だマリー!奴を倒すんだ!」
「ジョセフ君、さっきはヒヤッとしたけどホントにあたしが倒していいんだね?」
「頼む」
マリーの杖から特殊な光が球状に集中しており、その光の球は段々大きくなっていった。
「神よ、この力を私に貸してくださいませ。『ホーリーライトビーム』」
ゴンザの麻痺が解け、マリーの方へと突撃しようとしていた。
「そうはさせない!」
「ぐあぁっ!」
テレサはゴンザの足から太ももまでを剣で斬り捨てた。かなりの大物を相手にしたためかテレサの剣はゴンザを斬り捨てたと同時にポキリと半分に折れてしまった。
「おのれ、人間風情がこのわしに傷を負わせるとは…」
ゴンザはマリーの『ホーリーライトビーム』の光を激しく浴び、吸血鬼が太陽の光を浴びながら体が解けていくかのように分解されていた。
「いいかよく聞け!このわしを倒したということは必ず貴様らに死が訪れることになる…ぐぎゅわぁあああ!」
ゴンザの体は原子レベルで完全に消滅してしまい、その光は天へと昇り流れ星のように散りばめられていった。
「テレサ、奴の攻撃を止めてくれてありがとう」
「何を言っている。ジョセフが動きを一瞬だけでもくれなければ私達は全滅していた」
「まっ、ジョセフ達が足止めしなくてもあの程度の雑魚なら普通に仕留められたけどね」
マリーは口を滑らせて場の空気を乱していることに気付いていなかった。
「マリーそれ酷くない?ジョセフとテレサがあんなに頑張ったっていうのにその態度は」
ジンジャーはマリーの発言に対して指摘をするのだったが一向に反省の色を示す気配はなかった。
「だって本当のことなんだもん。でも二人ともありがとう…」
マリーは照れ隠しをしながら感謝の言葉を述べていた。
「マリー、さっきのあの魔法は俺にも使えるのか?」
「一応光属性の魔法だから習得できるはずだけどジョセフ君の今の魔力量を考えたら少し難しいかも…」
「そうなのか、魔力量を上げる方法とかはあって?」
「どうなんだろう…多分あるのはあるんだろうけどその辺はあたしにも…」
マリーはところどころ止めながら言っていたけど何か隠している様子でこれ以上はジョセフも尋ねるのは本人にも悪いと思い質問することを辞めた。
あのゴンザという化け物、ジョセフの『スパーク』で麻痺したはずなのに自力で解ける力があったということは奴よりも強い化け物がいることは明らかだ。
もしあれがジョセフ一人で挑もうものなら確実にジョセフは死んでいた。そのくらいゴンザは強かった。
ジョセフ達はゴンザを倒した後もゴブリンがいないか洗いざらい探してみたけれどゴブリンは見当たらなかった。
洞窟を無事に抜けだし、あの村にゴブリンはいなかったこととゴンザについて尋ねなければいけないと思ったジョセフはすぐさま村へと向かった。
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