忘れていたもの

「おまたせ」

そう言う彼女の右手には血の着いた包丁があった。手元に目線を感じたのか彼女は「ああ、これ?」と言い俺の方に迫ってくる。

「君を、私のモノにするためだよ?」

ああ、彼女はこんな人だった。幸せな日常のせいで忘れていた。彼女に殺されるならと、俺は小さく「いいよ」と言い手を広げた。

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