第19話 教師として
闘技アリーナには少女たちの掛け声と足音が激しく響き渡っていた。
「カナエ、肩肘張らずにもっとリラックスしろ。基本
「ふっ、くぅっ……! 魔力が少ないっ、我に対して、いささか難しい注文だなっ!」
「カナエは剣技だけでいえばこのクラスの中で一番だ。あとはどのタイミングで効率よく魔力を使うのかっていう判断力だけ。よーく考えろー」
ハルトがカナエに提案した
魔剣ヤタガラスという帝国では珍しいカタナ型の剣を扱うカナエはこのクラスでは随一の剣技力を誇るが、魔力がほんの僅かしか存在しない。
ハルトはその点を考慮し、僅かな消費魔力で発動出来る
「『スラッシュ』!『スラッシュ』!『スラッシュ』!『スラッシュ』!『スラッシュ』ッッッ!!!」
「……おいミヤビ。そんながむしゃらに剣を振っても魔力の無駄だし当たるもんも当たんねーぞー。もっと
「か、感覚!? 意識!? えーっと集中、集中……ってあぁもう! 攻撃される、瀬戸際でぇっ! そんなこと考える余裕なんて、あるワケないじゃない!?」
「慣れだ慣れ。ミヤビは魔力も剣技も平均的だが、この
ミヤビに提案した
彼女は濡羽色のような真っ黒な刀身が特徴的な上位ランク魔剣グラムを扱う。しかし平凡・平均・普通を地でいくミヤビはそれこそ様々な
だからこそ、ハルトはミヤビに『スラッシュ』という基本
その
「ふっ、ふっ、ふ……っ!! あ~もう、つっかれたぁ~! ハルっちー、少しだけ休憩してもイイー?」
「……あぁ、いいぞー。でも少しだけな」
「やりぃ♡ ハルっちだいすきー!」
「あっ、ちょっと! ローリエだけズルくない!?」
「おいおい、ずるいも何もローリエはしっかり
「やっぱハルっち、ウチの攻撃見えてるんだー。まぁウチって移動が速いだけで攻撃がなかなか当たらないんだけどねー♪」
ローリエに提案したのは
この小さな少女が用いる得物は、二振りの対になっているナイフ形の魔剣ジェミニ。彼女の場合は
この
そして、最後のクリスティアといえば―――。
「ふっ! ふっ! ふっ……!」
ただただ、素振りを行なっていた。ハルトからそう指示されてから、休むことなく、無心に、一寸の狂いも無く、一切手を休めること無く剣を振るっている。
彼女の額には珠のような汗がびっしりと張り付いていた。
「エイミー先生。クリスは今どんな感じですか?」
「……ハルト先生に素振りを指示されてから
「そうっすか」
「……どうしてなんですかね」
「ん、なにがです?」
エイミーは未だに素振りを続けているクリスティアから決して目を離そうともせず、言葉を紡いだ。
「どうして……、こんなにも真剣に、ひたむきに物事へ取り組むことが出来る彼女が報われないのでしょうか。クリスティアさんは皇女として誰よりも強い精神力と他人を想う心を併せ持つ、とても優しくて良い子なんです」
「…………あぁ」
「聡明な彼女にはきっと、この帝国を率いていけるだけの『器』がある。でも
エイミーは教師として己の無力さに歯がゆさを感じていたのだろう。
しかしハルトは彼女の言葉に耳を傾けながらも、真剣な眼差しでクリスティアの姿を見据えた。
その瞳の奥には、今もなお無我夢中に剣を振り続けるクリスティアがいる。
「だから、これから証明していくんですよ」
「え……?」
「例えクリスの
「ハルト先生……! はい、そうですね!」
ハルトは強さの有無に
強さとは”願い”だ。凄烈ながらも儚い、純粋な思い。己を突き動かす激しい感情が、更なる力を引き出すのだ。
やる気を見せるエイミーを見てニッと笑うと、ハルトは大声で剣を振る彼女に声を掛けた。
「おーいクリスー!」
「……ッ! あっ、え? あれ、ハルト先生! もう終わりですか?」
「いんや、時間いっぱいまで振り続けて貰うが……。だけど一時間も剣を振り続けて体力大丈夫か? それ疲れるだろ?」
「あはは……。確かに根気も必要ですが、もっともっと頑張らないといけませんから! 私、これでも力持ちなんですよ!」
「あ、あぁ……、なるほど、それでかぁ……」
なので剣の重さなんて小石と変わらないです! と鞘付きの魔剣精クラリスをにこやかにブンブンと振り回しながら気丈さを見せる。
ハルトは今更ながら空腹で気を失っていたときに、クリスティアが広場まで運んでこれた理由を知った。
「……クリス、今度給料が入ったらパン屋に連れて行ってやるよ」
「わぁ……、いいんですか!? よーし、素振り頑張ります!!」
まだ助けられたお礼をしてなかったハルトはクリスティアと約束をしつつ、それからもゼロクラスへの指導を行なったのだった。
ーーーーーーーーー
「続きが気になる!」と少しでも思って頂けたら、是非ともフォローや★評価よろしくお願いしますっ!(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます