第160話 欠落


ずっと何かが欠けている気がしている


あたたかい部屋にいるのに

肩口だけひんやり冷えていくような

おなかの中をすーすー風が通るような


何かが足りない

ここにはきっと何かが足りない

どうにも埋められない穴があることを

頭の片隅で気づいてしまっている


なんとかして埋めたくて

手当たり次第いろんなことをしてみても

結局は埋まらない虚しさが

よりいっそう穴を広げていく


寒いな、寒いよ

欠けた部分がどんどん冷えていく

手をあてがって塞ぎたいのに

その場所すら分からないからお手上げだ


もういいや

冷えていく体を投げ出して

静かに目を閉じた


見えるのは淡く光を孕んだ闇

見つめていたらすんなり心に落ちてきた


そうか、欠けているのは私自身だ

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