第79話 空の海


夕暮れ時の濃紺に

溺れる月は苦しかろう


やわらかなはずの輪郭は

滲んでゆるゆるほどかれて

流れ落ちるのは涙のよう

静かに静かに泣きながら

輝けるときを待っている


やがて日は暮れ闇が広がり

月はゆっくり泳ぎ出す


やっと空に解き放たれた

その輝きはやさしくて

まあるく光る満月から

ほろほろこぼれる黄金色

拾いあつめて手で掬い

じんわり温もり受け止める

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