幕間2

*-*-* 腰まである烏の濡羽色

 髪を切りたい。


 ヴェイグに、

“魔力は髪に宿ると信じられている。アルハは魔法を使っていることになっているから、なるべく短くするな”

 と聞かされて以来、なんとなく切らずに過ごしていた。

 切らなければ伸びるわけで。

 僕の身体はチートやらスキルやらの恩恵で、身体能力がおかしなレベルになっている。

 新陳代謝も活発なようで、髪が伸びるのも早い。

 切らずに過ごしてまだ数ヶ月だというのに、背中の真ん中あたりまで伸びている。


 有り体に言ってしまえば、手入れが面倒くさい。


「というわけで、お願いします」

「は、はい」

 メルノに散髪をお願いした。

 メルノはマリノの髪も切ったりしているから、安心して任せられる。


 屋外で、首から下をシーツで覆い、椅子に腰掛けた。

 後ろに立つメルノは、僕がスキルで創ったよく切れるハサミを構えている。

「では、切りますね」


 背中から、さきさき、と小気味良い音が聞こえてくる。

 音が中々上の方にこない。

 僕、そんなに毛量多かったっけな。


「終わりましたよ。どうですか?」

「えっと……あまり短くなってないね?」

 十数分ほどで、メルノが終了を告げた。

 髪の長さは殆ど変わっていない。毛先を揃えて、少し梳いた感じだろうか。

「でも、髪をあまり切るのはよくないですよ。魔力が消えちゃいます」

 メルノ、その話、信じてたのか……。

「それに、アルハさん、長い方がお似合いです」

「えっ!? そ、そう?」

「はい」

 力強く断言された。



 僕の髪は一年たった今も伸ばしっぱなしだけど、決してメルノの好みに合わせたわけではなく、魔力が消えたら大変だからです。



※なろうに設置してある拍手お礼用SSでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る