第八話 新人の印象 左衛門寺 ソフィアの視点
「本日付けで、こちらに配属されました! 高良 正人と申します! 宜しくお願い致します!」
新人が部署に入ってきた瞬間、
この男も絶対、オトす!
って、思った。
見た目も性格も正直どうでもよかった。
だって、逆にこの私の美貌でオトせない男がいたら許せないじゃなーい!
でも強いて言えば、印象はまぁ爽やか系? かな。
あと、スポーツ万能そうって感じ。でも、新人が来るまで『オトす!』って意気込んでワクワクしていたのに、
おーい、見過ぎだよー新人。
話しかけてすぐに楽勝すぎて拍子抜けした。
さりげな~く、見ているつもりなのだろーね君は。でも、きみ自身が思っているよりずっと、
ガッツリ見過ぎなんだよ!
私の
さっきから視線が私の目じゃなくて、
まぁいいや……、正人くんはどんな子かは把握しといた方がいいよねー。だって同じ部署ってことは仲間ってことだしさ!
ちょっと意識を集中して、正人くんに意識を集中させれば、『キイィィン!』と耳鳴りのような振動が眼球に響き私に能力の発動を知らせてくれる。
発動の知らせは私にしか聞こえないから、誰にも知られることもなく、能力を発揮することができる。
霊は必ずしも憑いているというわけじゃないけど、もし何か憑いてたらその人がどんな人か見極める判断材料にもなる。特に守護霊とかね。
すると、正人くんの背後に髪の長い女が見えた。
その女の顔は正人くんによく似ていた。
長い髪で影になっていて分かりにくかったけど、首には一筋の痣が残っていた。
ゴクリと鳴りそうな喉を反射的に抑え込む。
マジかよ。
見てはいけないものをうっかり見てしまったけど、顔には出さない。
あっぶねー。
あの髪の長い女は、恐らく正人くんの母親とかお姉さん辺りかな? 似てるから血縁関係者であることは間違いない。
しかもこの女、"首吊り自殺"で死んでるよ。
ガッツリ正人くんに取り憑いてるわけじゃないから、正人くんが殺人を犯したというわけではないみたい。正人くんの背中から少し離れて後ろについている感じ。大切な人を見守ることが出来ずに死に、未練が残った人の距離感ね。
でも、会って間もないのに死んだ血縁関係者の話、出されたら空気ヤバくなりそうだからコレに関してはそこそこ仲良くなってから話した方が良さそーだね。
いやぁ~びっくりしたけど、こっちはこっちでどう見たらいーの? マジで初めて見るんだけど……。
私の霊能力は、死んだ人間の肉体から魂が離れ、未練や怨念等強い想いを持ったその魂が具現化し生きていた頃の姿を象る霊を見るだけのものじゃない。私は、生きた人間の魂をも見ることが出来る。例外もあるけど、普通は一つの肉体につき一つの魂。
けど正人くん、きみ何で二つも持ってんのさー⁉︎
マジでダイジョーブなの⁉︎
身体何ともないワケ?
あり得ないンだけど⁉︎
一つの肉体に二つの魂が入っていれば、身体に多大な負担がかかり、病気になるなどの異常をきたしたり、場合によっては肉体が崩壊し死に至ることもある。あと、悪霊みたいに外部から他人の魂が無理矢理肉体に侵入した場合にそういったことがあるけど───。
コレに関しては思わず、正人くん本人に聞いてしまった。聞いてる間、私はその二つの魂に釘付けになって見てるから、会話の内容があまり耳に届いてこない。途中、二つの魂が同化しそうになったかと思えば、分離していた。
完全に同化はしないみたいね……。
観察途中で士郎さんが会話に入ってきて、なんとなく納得させられて、集中も途切れ謎は迷宮入りになってしまった。
正人くん本人に自覚もないし、身体にも異常ないみたい。
まぁいっか、士郎さんだって"そういうこともあるさ''って言ってたし。
***
「正人くんさー?」
「はい?」
「何で魂、二つ持ってんの?」
「……は?」
「もしかして、転生者か何かなの? きみも能力者?」
「え? すみません、仰っている意味がわからないのですが……」
「あーっとね、言ってなかったね。私、霊能力者なんだー」
「え、そんな簡単に言っていいもんなんですか?」
「というか俺、今世の記憶しかないんで転生者ではないと思うんですけど、あと、超能力者じゃないです。何も出たことはないんで……魂二つってことは、取り憑かれてる感じですか?」
「取り憑かれては……ないのかなー? そうゆーのじゃない気がする」
***
──「え? すみません、仰っている意味がわからないのですが……」──
──「というか俺、今世の記憶しかないんで転生者ではないと思うんですけど、あと、超能力者じゃないです。何も出たことはないんで……魂二つってことは、取り憑かれてる感じですか?」──
ソフィアは完全に見逃していた。
二つの魂に気を取られ、正人の口調と表情が僅かに変化していたことに。
そして、正人がソフィアに対してたった二つ交わしたこの時、
二つの魂は同化はしなかったが確かに
そのことにソフィアは気づくことはなかった。
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