第六話 新人の印象 生鷹 士郎の視点
「来週の月曜日に新人入ってくるから、皆んな仲良くしてあげてね」
先週、課長からそう聞いて、それが今日という日だ。
現在時刻午前三時十八分。
「……眠れない」
独身の静まり返った寂しい寝室で、天井の一点を見つめ、俺は呟いた。
年甲斐にもなく、俺はソワソワしていた。まるで、遠足が待ち遠しくて眠れない子供のように。もう36歳だというのにみっともない、自分でもそう思う。
今までにも後輩を持ち、指導してきたことはある。だが、良好な先輩後輩関係とまではいかなかった。この顔面凶器のせいで、普通に話しかけているだけで、怯えられてしまうのだ。自分で鏡を見ても怖いと思う。だから、そういう反応をされても仕方がないとは頭では理解できているが、少々寂しくも思うしかなり傷ついてしまうものだ。
まぁ、この顔のおかげで
今の部署に移った時も、皆、俺に対してぎこちなかったが、今はそうでもなく普通に接してくれるので有難い。だが、普通に接してくれるまでには結構時間がかかってしまうのだ。
できれば、あまり時間をかけずに普通に接してもらいたいのだが……。
第一印象で怖がられない方法はないだろうか? と新人との良好な関係づくりに頭を悩ませながら、俺は眠りに落ちた。
今回、うちの部署に来る新人が俺を受け入れてくれることを願いながら。
***
朝、俺は鏡を見て後悔した。
余計なこと考えずに寝とけばよかった。
ただでさえ顔面凶器なこの顔に目の下に大きなクマ。
「コレは……怖いな……」
俺でも引くレベルの怖さの顔が目の前に映し出されていた。
まだ見ぬ新人に怯えられることを覚悟して、俺は家を出た。
***
「本日付けで、こちらに配属されました! 高良 正人と申します! 宜しくお願い致します!」
新人の彼の印象は、
ニカっと笑った顔は爽やかで、サッカーとかバスケが似合いそうな子だな
と思った。
自己紹介で彼と話してみれば、彼は"普通"だった。
それがとても嬉しかった。本日の俺の顔面は最悪のコンディションだったにもかかわらずだ。
俺は彼のその反応にほっとし、一応勤務中にもかかわらず、意識を飛ばしたのだった。
つまり、寝た。
考える人のポーズで。
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