第11話

 山階が示したペーパーは昔の労働省が出した通達だった。内容は次の通りだ。




都市銀行等における「管理監督者」の範囲(昭和52年2月28日基発第104号の2)


(1)取締役、理事等役員を兼務する者

(2)出先機関を統轄する中央機構(本部)の組織の長で、

1. 経営者に直属する部等の組織の長(部長等)

2. 相当数の出先機関を統轄するため権限分配を必要として設けられた課又はこれに準ずる組織の長(課長等)

3. 1~2と同格以上に位置づけられている者であって、1の者を補佐して、通常当該組織の業務を総括し、かつ、1の者が事故ある場合には、その職務の全部又は相当部分を代行又は代決する権限を有する者(副部長、部次長等)

(3)支店、事務所等出先機関における組織の長で、

4. 支店、事務所等出先機関の長(支店長、事務所長等)

5. 大規模の支店又は事務所における部、課等の組織の長で、上記1.2.4の者と企業内において同格以上に位置づけられている者(本店営業部又は母店等における部長、課長等)

6.  4の者に直属し、下位にある役付者(支店長代理、5に該当しない支店課長等)を指揮監督して、通常支店等の業務を総括し、かつ、その者が事故ある場合にはその職務の全部又は相当部分を代行又は代決する権限を有する者であって、1.2.4と同格以上に位置づけられているもの(副支店長、支店次長等)

(4)スタッフ職

7. 1~4と企業内において同格以上に位置づけられている者であって、経営上の重要な事項に関する企画、立案調査等の業務を担当する者


 これは管理監督者の範囲についての説明文だ。


 この基準を単純化すると管理監督者とは次の役職が該当する。

取締役等役員を兼務する者

支店長、事務所長等事業場の長

本部の部長等で経営者に直属する組織の長

本部の課又はこれに準ずる組織の長で上記三者と同格以上に位置付けられている者

 すなわち、銀行におけるほとんどの管理職は、法律上の管理監督者ではない、との解釈が成り立つのだ。


『こいつ、何者だ?』田嶋の中で疑問が浮かぶ。山階が提示してきたペーパーは普通の『素人』は存在を知らない。知っているとすれば、銀行で人事部に所属してきた行員か、従業員組合すなわち労働組合の専従職ぐらいだろう。


 田嶋の頭の中でアラームが鳴り響いた。嫌な予感しかしない。

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