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「うお-、スゲー! ちんこがスースーする! これが風と一体になるってことか!」
ためらいなくフルチンになったヒューヴは、股間に風が当たる感触にはしゃいだ。まるで小学生だ。四百年間生きてきた結果がこれなのか……。
まあ、俺もフルチンなわけで、人のことは言えないんだが。
「よーし! オレも風と一体になったことだし、今度こそお前を撃ち落としてやるぜ!」
フルチンですっかりテンションアゲアゲになったヒューヴは、再び俺に矢を撃ってきた。ふん、威勢よく吠えたところで、さっきと何が変わったって言うんだよ。俺もすぐに、それらの攻撃をフルチン風の舞で軽やかに回避した。
はずだった――が! 直後、俺の股間に痛みが走った!
「なん……だと……!」
なんと、やつの放った矢の一本が、わずかに俺の股間の皮に当たったのだ! 直撃でこそないものの、さっきまでかすりもしなかった攻撃がいったいなぜ……?
「おお! やっぱフルチンになったほうが、敵のチンコ狙いやすくなるな!」
と、ヒューヴはガッツポーズしている。え? そうなの? その理屈であってるの? 目には目を(以下略)とか、医食同源みたいな話?
「よし、オレはもうお前の動きは完全に見切った! こっからはガンガン当てていくぜ!」
ヒューヴは完全に調子づいたようで、また俺に矢を撃ってきた!
俺はやはりそれらをフルチン風の舞でよける……が、フルチンで謎強化されたやつの高速射撃からは、もはやそれだけでは対処できないのは明白だった。矢をよけながらも、同時によけきれないぶんをゴミ魔剣で振り払うことになった。
そう、今までは「矢をよけながらジリジリ相手との間合いを詰める」という戦法だったのに、ここにきて「矢をよけながら、よけきれないぶんをゴミ魔剣で振り払う」というやり方に変えざるを得なくなったのだ。これではやつにこれ以上近づくことができなくなってしまう! そのうちマジでちんこに矢が当たるかもしれないし、ジリ貧とはまさにこのことだ。
むろん、矢が尽きるのを待つという戦法もあるが、確かあいつのボウガンの矢は小型で、何百本も一度に持ち歩けるタイプのものだった気がする。さすがにそれはちょっと現実的ではないというか、何百本もの矢が尽きる前に俺の股間のライフのほうが尽きる可能性のほうが高いような……。ゴミ魔剣使って防御してはいるけれど、なんかだんだん当たりそうになってきてるし!
く……。ここはやはり動きのパターンを変えるしかないか! 今こそ、俺の中の眠れる野獣を目覚めさせるとき!
「ウキーッ!」
と、瞬間、俺は鳴いた。
そして、直後、こっちに向かって飛んでくる矢に対し、回れ右して背中を向け、その矢を尻の肉に挟んでキャッチした!
「な……」
当然、ヒューヴはその俺の尻肉キャッチに度肝を抜かれたようだった。どうだ、この神業! 敵の意表をつくとはまさにこのことだ!
そして、俺は素早く尻の間から矢を回収し、そのスキだらけの男のちんこに向かって投げた! ダーツのように力いっぱい投げつけた!
「ウキーッ! ウキーッ!」
しかし俺の渾身の反撃はヒューヴの股間を射抜くことはできなかった。なんと、やつはその矢を、太ももとちんこでぎゅっとはさんでキャッチしやがったのだ!
「ち、ちんこ本体で攻撃を受け止めるだと……!」
俺は戦慄した。感じやすいちんこへの被ダメージを恐れない、なんて勇敢なバトルスタイルだろう!
「お、お前、やるな……」
すかさず飛んでくる反撃の矢をかわしながら、俺は初めて、ヒューヴを真の敵として認められた気がした。
「お前こそ、今の尻使いは相当だったぜ……」
ヒューヴも俺を好敵手として認めたようだ。まさに、伝説の男同士の戦いだ!
「このオレをここまで翻弄するとは、お前、タダモノじゃねえな? 風と一体になることでオレもようやくわかった気がするぜ。お前のその身にまとうただならぬオーラ? それが風を通じてオレの股間をざわつかせている感じだぜ……」
ヒューヴはちん毛を風になびかせながら何やら悟った顔をして言う。なんだその汚い共感覚。その部分から俺の強さをわかられても困るんだが。
「だからオレは、こっからは本気で行く!」
「え」
今までのは舐めプだったとでも?
「見ろ、これがオレの本気だっ!」
と、叫びながらヒューヴはポンチョの中から何か取り出した。見るとそれは小型の弓だった。それも、俺にとっては非常に見覚えのある……。
「……げ」
俺はとたんにいやな気持でいっぱいになった。こいつはさっきからボウガンしか使わないから、それはもう持てないのかと思ってたのに!
「いいか、こいつはオレの必殺武器! その名も――」
「魔弓ブラストボウだよな?」
「そうそう! よく知ってるなー」
「……まあな」
やべーな、おい。こいつのメイン武器来ちまったよ。
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