雲と振動

守山 彬

雲と振動


誰かの声が雲を千切る

犬が寝そべっているようなかたちだったんだが


別れた雲がまた出会うことがないかと

しばらく見上げたけれど


残念


横断歩道のカッコウが僕を引きずるうちに


雲は溶けてしまった



誰かの声があなたのもとに届くこともあったろうか


僕の声があなたのもとに届くこともあったろうか


唄は響いているだろうか


雲は踊っているだろうか



ひとつひとつ裏切ることもできないままにちぎれていく


溶けてしまったならまた探すのか


今日を明日に送り出して


今日の続きを見上げるのか



誰かの声は犬の耳をちぎっていった

それが欲しかったわけではなかったかもしれなかった


それでもいつかの僕を置いて行った

見上げているだけの僕を置き去りにしていった

いつかのあなたは溶けていった

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