第2話 減税してみたが。
「そもそも、領主としての最終目的は何なんだ?」
ボロボロになった領地及び領民を立て直す? ではその先は?
領土の拡張でもするのか? この国も既に領主が居る土地しかないだろう。
となると、戦でも起こして奪い取るしかない。
バカバカしい、そんな争い事俺には興味が無い。
仮に大半の領地を得たとしても国が黙っていないだろう。
たかだか1人の領主が力を持ち過ぎるのは国にとっても良く無い話だからな、恐らく一定の規模に達した所で領地分割されると見て良い。
じゃあ、王女様でも手中に収める? いや、さっき考えた通り今の俺は貴族令嬢、つまり女だ。
何処の王様が自分の娘を女性に差し出すかと言う話になる。
そんな事したら血縁が途絶えるなり政略上の駒を無意味に失うだけで絶対にやってはならないレベルの愚行。
もしも、領主として成功した場合俺に与えられる可能性があるのは王女で無く王子。
よっぽどの事が無い限り俺と行動を共にしているエリウッド王子だろう。
勿論、第1~第3王子の中に弟の女を奪い取りたい人間としてのクズが居る場合、彼等の内誰かとなる可能性はある。
ただ、どちらにせよ男である事には間違いない。
肉体は兎も角として精神は転生前の田中太郎、つまり男である以上男は要らない、必要無い。
残念ながら俺は男色の趣味は無いからな。
結局、程々以上の成果はやめておいた方が良さそうで、取り敢えずは領民の生活水準を上げる事を考えよう。
次の事は、それが達成してから考えても遅くない。
しかし、それ等の成果が出るとしても数年掛かるのか、シミュレーションゲームだったら2、30時間もあれば大方結果が見える、なんて事は考えない方が良いだろう。
「取り敢えず、税率10%下げてからまた考えよう」
結局、高過ぎる人件費を考えると領民に対して課している税率を70%から60%に下げる事が精一杯だろう。
どう考えてもあの手の無能共は給料下げると言ったら喚き散らすだろうし、解雇すると言ったら逆恨みで兵でも寄こして来そうだからな。
―数日後―
俺はこの領館に勤める者達にこの領地で取っている税を70%から60%に減らすと宣言した。
思った通り、ここの無能共は自分達の給料が下げられるのではないかと怪訝そうな目で俺を見て来た。
だから俺は自分の取り分を年辺り聖銀貨4枚とした。
その瞬間、無能共が目を丸くして、たったの聖銀貨4枚!? と声を上げる。
前の領主は聖銀貨なら100枚はせしめていたのに、と。
たったの4枚と言っても聖銀貨ならば日本のサラリーマン分の年収位、つまり400万位にはなる。
人間が不自由なく生きていくには事足りる額だ。
無能共には「私が身を切る以上文句は言わせませんわ」と言っておいた。
流石の無能共も自分達の身が守られるなら、と安堵の溜息を吐くだけでそれ以上追及する事は無かった。
こいつら、何処まで腐っているのやら。
「ルチーナ様!」
自室にて、珍しくステラたんが声を荒げている。
「あら? ステラ。どうなさいましたか?」
「税金はもっと下げれます。私の領地では領民から35%の税しか取ってません。それなのにどうして60%も取るのですか!」
ここまで怒っているステラたんを見たのは初めてかもしれない。
おしとやかで運が良い貴族令嬢と思っていたけれど、心の奥底には確かな正義が宿っているのか。
これはこれで良いギャップで十分萌えさせて頂こうでは無いか!
それはさて置いて、ステラたんもこの前会った領民達が貧困に喘いでいたのは知っているだろう。
だから、恐らく彼等を助けたい気持ちが溢れて怒りをぶつけて来た。
日本に居た時もこんな女の子がいてくれたら惚れこんでいたのにと思っても俺なんかがこんなハイレベルな女の子に相手される訳もなく、もっと言えば俺は不慮の交通事故で死んだ訳だから結局ステラたんみたいな女の子と付き合えても何の意味も無いんだよな。
いや、でも、可愛い彼女の為に就活を頑張ったかもしれないし、別の会社に勤めていたら交通事故に遭う事は無かった訳で。
はぁ、たらればを考えても仕方が無いな、話を戻そう。
「そうですわね。簡潔に言えば様子見ですわ」
俺はそっと髪を掻き上げながらステラたんに告げる。
俺の言葉を受けたステラたんが目を見開き、
「様子見って、ルチーナ様も貧困に喘いで居たお方を見ましたよね! あの方々が可哀想だと思わないのですか? 私は可哀想で仕方ありません、一刻も早くお助けするべきです!」
凄い剣幕だ。
それにしても、若いなぁ少女とはこうだよなとふと自分の過去を振り返ってしまう。
いや、俺の場合少年か。
「可哀想だと思うし可能な限り早く助ける必要があるわね」
「ならどうして!」
ステラ嬢の大きな声で少しだけ耳が痛くなる。
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