このまま

春嵐

第1話

このまま。


このまま、世界が終わればいいのに。

眠りが覚める瞬間にだけ、そう思う。世界が終わってしまえば、目覚める必要もなくなる。


夢を、見ていた。


他の人は、夢に一貫性やストーリー性を感じたりはしないらしい。ぐちゃぐちゃに記憶が整理されたりする、というのが、夢。


私にとって夢は、現実以上に現実だった。


人がいる。世界がある。私がいる。眠りに入る度に、違う私が。そして、違う世界が。そして、その中で、自分を生きる。


眠りから覚める瞬間だけ、はっきりと夢であることを自覚してしまう。目の前の世界が、自分が、感覚が、もうすぐ消えてなくなる。切なさだけが残る目覚め。そして、すぐに夢は私の全身から消えていく。


覚えていない。

それでも、夢はたしかに存在していて、その中で私は生きた。現実以上に、現実な夢を。


夢のなかに、いられたら。

ここで世界が消えてなくなってしまえば、ずっと、夢に。


いつも、そう思いながら、目覚める。切ない気分だけを残して。


おはよう。そして、さよなら。夢が終わって、現実がはじまる。次の夢までの、現実が。

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