魔女のしもべ
キミは気付いてくれるかな。ボクとなら飛べるってこと。
ボク、キミが魔女の子だって知ってるよ。魔法に関することを習ったことがなくたって、匂いがするもの。だから必死にアピールしてるんだけど、まだ初心者ですらないキミに心の声なんて届くわけがないんだよね。
体は魔力切れでガチガチ。とにかく触れてくれさえすれば、ほんのすこぉーし分けてもらって動けるんだけど――
「おばばの、ぶわっかやろぉーう!」
ファーストコンタクトというか、ファーストタッチでまさか蹴り飛ばされるとは思わなかった。そのほんの一瞬でちゃっかり魔力をもらえていなければ、今ごろ冷たい川の底だ。
黒い石の姿から、数年ぶりにコウモリに
河川敷で膝を抱えてうつむいているキミに、挨拶をする。
「こんばんは、魔女の子。ボクは、魔女に
さすがに初対面がコウモリ姿では、また蹴り飛ばされるかとも思ったが、そんなことはなかった。むしろキョトンとしていて、どこにいるの、と愛らしく首をかしげている。
「目の前なんだけど――あれ、眼鏡はどうしたの?」
いつも掛けていた、光の透ける赤ぶちの眼鏡が今日はない。何か嫌なことを思い出させてしまったのか、ほっぺを膨らませて黙り込んでしまった。
「会ってすぐで悪いんだけど、ボクのお願い聞いてくれるかな?」
別にいいよと言うので、その胸に飛び付いた。おどろくキミをよそに、もう少しだけ魔力をもらってササッと背中に回り込む。腕を伸ばしてしっかり魔女の子を抱きしめ、大きくした翼を力強く振った。飛び始めは騒いでいた魔女の子も、さすがに静かになる。
陽が落ち、夕闇に染まっていくその真ん中で
「君と、夜空を駆けたい」
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魔女のしもべ
〔2018.11.30作〕
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「君は気付いてくれるかな」で始まり「君と夜空を駆けたい」で終わるお題にて。望月葉琉さんのホムペ12周年企画に寄稿した1つめ。
創作雑記帳の『一人称書きと三人称書き』で書いた例文と同じ世界、同じ少女。今のところ設定の類いはコレと言って考えてない真性(?)の断片。
(2020.06.08)
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