出戻り勇者は自重しない ~ 異世界に行ったら帰ってきてからが本番だよね!~
TB
中学生編
第1話 プロローグ①
男なら誰でも通過する青春の一ページの中に俺はどっぷりハマっていた。
俺の名前は『松尾翔』十四歳、愛知県内の市立中学に通う二年生、女子には興味津々だが、ちょっと良いな! と思う女の子に告る度胸は無い。
健康な男子の俺は親からやっと買ってもらったスマホで、エロ画像を検索するのが一番の楽しみで、無料投稿サイトのラノベ小説を読んで、俺が異世界に行ったら、こんな能力を身に着けて、無双してハーレム生活を送るんだ! と想像するのが日常だった。
そんな俺の日常は、突然に奪われた。
父さんの昔からの趣味で、俺も子供の頃から、やっていたモトクロスのジュニアクラスのレース中の事だった。
今日は珍しく調子いい、いつもなら最下位争いを繰り広げるのがやっとの俺が、珍しく二位の順位でレースの最終周回を迎えていた。
雨上がりのコースはコンディションが最悪で、ぬかるみ状態の場所が何箇所もあり、スローペースになった事も運が良かったんだろうけど、それでも出来すぎだ。
いつも少し残念そうな父さんの顔を見る事が多かったけど、今日は嬉しそうな顔を見れるかな? と、考えながら最後のジャンプを迎えた。
先頭の選手が飛んだ直後に俺もジャンプ! 先頭選手が、なんと着地をミスって派手に転んだ。
やった! 俺がトップだ‼ そう思った瞬間に俺の目の前の空間に魔法陣が浮かんだ。
そのままジャンプ中の俺は、魔法陣を避ける術も無く飛び込んでいった。
◇◆◇◆
モトクロスバイクに乗ったまま着地をしたそこには、何十人もの魔法使いらしきローブを羽織った人達が、力を使い切って倒れている感じだった。
とりあえずバイクから降りてメットを脱ぐと、女の子の声で声を掛けられた。
「勇者様、この世界をお救いください」と
いやいや今どきベタすぎるだろこの展開、人気の投稿サイトでもこの展開のスタートは、もう五年くらい前の作品じゃないと見かけないよ?
俺のバイクは競技用のモトクロッサーだからスタンドとか無い、倒したままの状態になっちゃうし、取り敢えずハンドルを持って起き上がらせ、柱に立て掛けながら、「それってさ、選択肢とか無いんですよね?」と聞いてみた。
まぁそれから、色々な事があったけど、その時の女の子は当然のようにこの国の王女様で、魔王を倒すことを頼まれて、俺も頑張って魔王を倒しちゃった。
でも、何の力も持たない俺が異世界に転移させられて、魔王を倒すに至る力を身に付けるまでには、十四年の月日が流れていた。
魔王を倒す事により、何でも一つ願いを叶える事が出来る事実が発覚した時に俺は迷わず「地球に戻りたい」と願った。
地球での十四年、この世界イルアーダでの十四年を合わせると二十八歳になっていた俺は、伊達に地球に居た頃にラノベを読み漁ってた訳では無い。
魔王を倒せるほどの力を持つ俺が、次のこの世界の厄災として恐れられる存在となる未来を容易に想像できた。
二十八歳で人類最強の力を身に付けていた俺は、まぁそれなりに、この世界ではもてたし、それなりの財産も手にしていたが、やっぱり現代日本の便利さや、平和な世界を知っていると帰りたかったさ。
幸い結婚をしたり、子供を作ったりはしていなかったから、心残りは少なかった。
獣人族の女の子の尻尾や耳をモフれないことくらいしか……
帰るにしても二十八歳になった俺が、いきなり家に帰って果たして両親が受け入れてくれるんだろうか? とか、この世界で身に付けた能力って向こうの世界で使えるのかな? とか色々気になることはあったけど、この世界で暗殺される未来しか見えない中で暮らすよりは幸せなはずだ。
そして俺は、来たときと同じ様にヘルメットを被り、バイクに跨って、エンジンを掛けた。
俺のバイクは、この世界で身につけた能力で魔力を変換して走れるように魔改造したので、十四年たった今でも動いてるんだ。
メンテナンスも修復魔法でバッチリだ。
元の世界への転移を、強く念じると来た時と同じような魔法陣が前方に展開され、バイクで突っ込んでいった。
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