第108話 俺達とヤバい宝具 前編

 さて、初の虹色の宝箱の中身は四つ……うち三つが宝具か。


 やっぱりパンドラの箱は内容だけならコレと一緒って話は本当だったみたいだな。


 まず宝具でないものは、鳥の魔物の羽根の束だった。

 大きくて真っ赤。もしかしたら俺達が倒したデカいフェニックスのなんじゃないか、これ。


 アイツは倒した後、まるごと『シューノ』に収納したからな、いまさら羽根だけもらっても……って感じはする。


 で、肝心の宝具は札二枚と保存玉、その保存玉の中からは紅い斧が出てきた。


 この斧は長さ的に片手持ち用だろう。木を切るのには使えない。

 名前は『炎紅の戦斧 アルクレッド』。


 効果は火属性の攻撃を特大強化し、魔力を任意の数だけ消費することでこの斧から火が出て燃え、術技でない攻撃に火属性を付与するらしい。


 パッと見は微妙だな……。特に、火属性付与が術技に対応していないのがなんとも言えない。


 まあでも、俺からすれば話は別だ。火属性の攻撃が魔法や術技無しでできるようになったってことだからな。今まで俺の属性を持つ攻撃は『ハムン』の光の矢だけだった。

 『ソーサ』で操る用としてありがたく使わせてもらおう。


 次に、札のうち一枚は『究極魔法:フレアオン・マリオニクス』という火属性の攻撃魔法だった。

 魔力量から100消費し、鳥型の強力な火炎弾を放つ技だそうだ。そしてその炎の鳥は、一定時間好きに操れるという。


 ロナに覚えるか一応聞いてみたが、必要ないと言われた。

 彼女はステータスの都合上、攻撃魔法と相性が悪い上に、そもそも距離攻撃は<月光風斬>で十分だからな。

 まあ、そう答えるのはわかってたことだ。


 もう一枚の札は『究極魔法:ライフナー・フレムニオ』。

 必要な魔力量は70以上。


 どうやら火属性の回復魔法らしく、もとから最上級魔法程の効果がある上で、火属性と回復系の両方の属性強化の恩恵を受けられるようだ。

 さらに、この魔法で回復された人はそのあと一定時間、火属性の耐性が特大アップするというオマケ付き。


 こっちはロナもニコニコしながら是非覚えたいと言っていたし、俺も覚えてもらいたかった。そのため、そのままこの札は彼女のものとなったぜ。

 俺達コンビの耐久面がこれでまた一つ良くなったな。



「……よし、これはそこそこ良い収穫があったといえるな」

「うんうん!」

「じゃ、ラストはお楽しみにしてたお姉さんからの宝箱だ。……っと、そうだ。その前に髪飾りも鑑定しなきゃな」

「あ、そうだった! お願いしますっ」



 ロナはもらってからずっと頭に付けていた、鳥を模した金色の髪飾りを外し、俺に手渡してきた。


 さてさて、これはあのお姉さんから直接受け取ったんだ。

 俺が緑の骨の剣士から渡された愛帽のように、強力な効果が備わってくれていると期待し、見てみよう。



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劫火翼こうかよくの髪飾り マレス」<宝具>


 この髪飾りを付けている間、攻撃と魔力強度の値がそれぞれお互いの値を合計したものとなる。

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「……は?」

「え、なに! ど、どうだったの?」

「いやこれ、マジなのか……」



 説明こそシンプルだがエライこと書いてるな……⁉︎

 攻撃と魔力が互いに合わさった数になるだなんて。


 まさか本当に俺の帽子に引けを取らないとはなぁ。さすが、ダンジョンの魔物のトップの私物ってとこか。


 しかし、うん、もう少しだけ色々試してからロナに説明しよう。

 もし俺の考えが正しければ、この宝具の本質はこんなもんじゃない。



「……なぁ、ロナ。もう一度ステータスカードを見せてくれないか? それでさ、そのカードってたしか補助魔法やアイテムの効果も込みで表示するモードがあったよな?」

「うん、あるよ?」



 いつも、ロナは(俺もだが)カードを自分本来のステータスの数値のみ表示する状態にしている。それが世間的にはステータスカードの標準形態だしな。


 だが、これから試すことの結果を見るには、その基本でない方の状態にしてもらう必要がある。

 


「悪いが一旦、そっちに変えほしい、で、そのあとに髪飾りをもう一度つけてくれないか?」

「わ、わかった!」

「ありがとう、助かるぜ」

 


 俺はロナから設定を変更したカードを受け取り、攻撃と魔力の数値を確認した。

 今、彼女は『リキオウ』と『バルバリド』も外しているため、この設定でも四つのステータスの値は全て元のままだ。


 そしてお願いした通り、ロナは金色に輝く髪飾りを再度、頭につけてみてくれた。

 すると元は「422」とあった攻撃と、「106」だった魔力強度が、どちらも「528」と自動で書き換えられる。


 よし、きちんと宝具の鑑定結果の説明通りだ。

 これだけでも十分、強力だが……。



「……今度は『リキオウ』をはめてくれ」

「う、うん」



 そうして攻撃の数値は、髪飾りを装備した状態より五割増しの「792」であると、きちんと表記された。

 そして魔力強度も……それと同じ「792」になっていた。


 は、ははは! やっぱりこうなったか!

 俺の予想はあっていたが、本当にえらいことになったもんだぜ。


 こうして『リキオウ』の効果が魔力強度にも反映される……ということはその逆も可能ってことだ。

 魔力強度を強化する魔法や宝具を使えば、その分、攻撃の値も上がる! 攻撃力を上げる手段が倍に増えたと考えて良いんだ!


 いや、それだけじゃない。

 ロナが扱う<月光風斬>などの術技は元々、攻撃の値だけでなく魔力強度もその威力に関係していたはずだ。


 それも込みで考えると、ロナはこの『マレス』一つで、どれほど強くなれるのだろうか……!

 


「えと、あ、あのー……ザン?」

「え? あ!」



 声をかけられたことで、麗しいレディが俺の顔を覗き込でいることに気がついた。

 しまった、いつのまにか考えることに没頭しすぎてしまっていたようだな。ノットジェントルだったぜ。



「……あ、あー。ははは、悪いな。ちょっと上の空になってた」

「それくらいすごいんだ?」

「ああ、すんごい。きちんと全部説明するよ。きっともう、それを外せなくなるぜ?」



 俺は『マレス』の効果、そしてその応用方までをロナに伝える。


 全てを話し終える頃には、彼女はその黄色い目をまんまるくして顔全体で驚きと喜びをあらわにしていた。


 まあ、そうなるのも無理ないさ。



「ふぇ……えぇ⁉︎ え、えっ、えええ、え⁉︎ こここ、こ、こんなのアリなの?」

「俺の帽子がアリなんだから、それもアリなんだろうな」



 この髪飾りは、紳士的マナーとか気にせずに貰ったあの場で鑑定すればよかったかな。

 そしたら、このロナの反応をお姉さんに見せられたろうに。





=====


連絡です。

すいません、話のストックもアイデアのストックもなくなったので、次回からは投稿が遅くなるか、日が開くかもしれません。

とりあえず明日は大丈夫です。


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