◆ ロナと回復魔法

◆=閑話マークです!


=====





「戻ったぜ」

「ん~♪」



 ロナはかなりご機嫌な様子だ。

 女の子だもの、アクセサリーが好きなんだろうな。


 俺が湯浴びに行き、そして今こうして帰ってくるまで、その間ずっとニコニコしながら『メディロス』の指輪を眺めていたようだ。


 まるで、昨日愛帽を手に入れた時の俺みたいだぜ。



「さて、ロナ」

「んー?」

「どっかの熱烈なファンから貰った『ライフオン=オルゼン』、試してみないか?」

「そうする!」

「でも効果見るために自傷するのは無しな」



 なんて、『メディメス』のナイフを試した俺が言えたことじゃないが、あれは俺以外誰も見てなかったからセーフだ。



「だいじょーぶ、傷跡ならあるから」

「へ? どこに?」



 ロナ本人から竜族は傷が残りにくいと聞いているし、実際に今朝見た半裸体は綺麗なものだった。


 ならばつまり、胸当てコルセットブラジャーの中やドロワの下とか、俺が見てはいけないようなところにその傷があるのだろうか。

 なんと紳士的じゃない考察をしているんだ俺は⁉︎

 

 ……なんて考えをよそに、ロナが取り出したのは自分の竜の尻尾だった。

 彼女はその先端を自分の膝の上に乗せる。

 なんかホッとした。



「……その尻尾が?」

「うん、竜族って他の獣族の人達より尻尾が大きくて太いから、色んなところにぶつけたり、地面と擦れたりして傷つきやすいんだ。それが重なって、治癒も追いつかなくなって、傷が残るの」



 たしかに。口には出さないが、そのでかい尻尾は生活する上ではかなり邪魔くさそうだ。

 怪我をしやすいと言うのも納得がいく。



「じゃあ、その尻尾用靴下みたいなのは、怪我防止のためのものだったのか。ただのオシャレアイテムかと思ってたぜ」

「女の人はそう思ってる人も多いかな。私のもリボン付きだしね」



 ロナは尻尾用靴下、正式には『尾あて布』を脱いだ。

 その下の竜肌はたしかにかなり傷だらけで、尾の別の綺麗な部分と比べるとその差は歴然。少し痛々しいとも思える。



「痛まないのか……それ」

「痛くはないよ! 逆に言えば、痛くないからこそこうなるのかもね」

「なるほどな」

「じゃ、試してみるよ」

「おう!」

「『ライフオン=オルゼン』っ!」



 ロナの全身が優しい光に包まれた上、複数の魔法陣が彼女の身体を次々と通り抜けていく。なんというか、厳かだ。


 数秒して光は晴れ、ロナは手のひらを返したりしながら自分の身体を軽く眺めてゆき、最後に尻尾を確認。


 俺から見てもわかるほど、細やかなものも含め全て、傷が綺麗さっぱり無くなっている。

 紅く輝くあまりにも立派な竜の尾がそこにはあった。

 


「おお、凄いな」

「こんなふうになるんだ! さすがは究極魔法……」

「スベスベそうだな、触れて見てもいいか?」

「……ん。ザンならいいよ」



 あれ、言い方が……。本来はダメなものなのだろうか。

 でも許可は降りたし、せっかくだから触らせてもらおう。



「では失礼して。……おー」

「……ど、どう?」

「綺麗に手入れされた金属の表面を触ってるみたいだ」

「そっかぁ」



 なんか、しみじみとした感じでロナはそう言うと、『尾当て布』で再び尻尾をおおった。

 効果のほどがわかったなら、次はそのあとのことだ。



「で、魔力はどうだ? 気分は悪くなってないか?」

「あ、えーっとね、ちゃんと残り1になってるけど、全然気持ち悪くなってないよ! むしろ快調かな。効果の説明の通りだよ」

「そうか、でも残り1ってことは、『回復節約Ⅲ』は発動しなかったのか?」

「この魔法って、使うのに最低200の魔力が必要でしょ? 多分だけど、その最低限の消費量が変わってるんだと思うな。そんな感じがするの」

「ほほう」



 特殊な魔法は、能力の適応もまた特殊……と、いうことなのかもな。専門家じゃないからよく分からないけれど。



「あと、回復魔法は何か覚えたりしたか?」



 そう訊いてみる。

 これがこの回復魔法の試運用の本命だ。あったら非常に便利だからな、回復魔法は。

 しかしロナは首を横に振った。



「残念ながら……」

「そうか、まあ、それなら仕方な──」

「あ、今来た!」

「おおお!」



 まさか諦めかけた瞬間に来るとは、何が起こるか分からないもんだな。

 とにかく、これでロナは基礎の回復魔法『ライフ』と解毒・解病魔法『ヘルフ』を覚えられたようだ。

 


「私、僧侶や賢者に適正はないんだけどな。でも覚えておいて損はないよね!」

「仲間を守るパラディンらしいとも言えるぜ? その指輪を付けていたら回復魔法の効果を上げれるし、節約する能力もある。俺が傷ついた時は治療頼んだぜ」

「うん!」

「これでロナを守るために無茶をしても多少はオーケーだよな!」



 高らかにそう宣言してみると、ロナは少し頬を膨らませて可愛らしくムッとした。冗談だとわかってはいるようだ。

 無論、いざという時以外はロナが嫌がるから無茶はしないつもりさ、紳士的にな。



「ダメだよー、そんなことしたら。逆にそれを言うなら私の方かな! 自分で回復できるから、そこそこ大きな怪我しても大丈夫だよね!」

「ダメだ、レディの傷つくところは見たくない」

「……」

「……」

「……あぅ」

「ま、お互い無理しないようにしようぜ」

「だね」



 とにかく俺たちはまた一つ強くなれたってことだ。






=====

-あとがき-


いつも感想やお気に入り登録非常にありがたき幸せ。

拙者、著者のSs侍と申す者でござる。


閑話ゆえ、せっかくであるためちょっこっとだけこの世界のルール的や主人公達について説明しようと思った所存。


では、以下より始めますれば。



・ザンの情報

本名:ザン・コホーテ

年齢:17歳 種族:ノーマル族

身長:170cm(まだ伸びる)

髪:黒/癖毛 目色:黒



・ロナの情報

本名:ロナ・ドシランテ

年齢:16歳 種族:竜族

身長:162cm ??:H~G cup

髪:紅/ストレート&編み 目色:黄



・通貨

1ベル=1円

銅貨=1ベル/大銅貨=10ベル/銀貨=100ベル/大銀貨=1000ベル

金貨=1万ベル/大金貨=10万ベル



・アップ・ダウンの段階(宝具や能力)


アップ < 大アップ < 超大アップ < 特大アップ < 極大アップ

(宝具は超大アップ未満の効果はつかない)




では、また次回もお楽しみください!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る