呪われた身でもジェントルに 〜最弱から始まるダンジョン攻略〜

第38話 俺と二つの宝箱 後編

　さーて、今度は四つ入ってた方の箱だな。

　中身は白い指輪と白いナイフと札が二枚だったか。

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「治癒の指輪　メディロス」(宝具)

　装備者は回復魔法の威力が極大アップする。

　装備者の魔力が何らかの方法で消費された場合、その魔力の一部を回収する。その後、その魔力を自動で回復魔法扱いで使用し、装備者を回復させる。

　回収した魔力が一定より少なかった場合、効果は発動しない。

　この指輪による魔法の威力は、回収した魔力の量と、使用者の魔力強度によって変化する。

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「治癒のナイフ　メディメス」(宝具)

　装備者は回復魔法の威力が極大アップする。

　魔力を３０消費し、このナイフに魔力を込めることで、刺した対象を回復させる。

　効果の発動中、刺された対象はこのナイフによる痛みを感じなくなる。

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「魔法の札　［ライフオン＝オルゼン］」(宝具)

　この札を使用することで魔法［ライフオン＝オルゼン］を習得することができる。

・［ライフオン＝オルゼン］

　一日に一度かつ魔力が２００以上残っている場合のみ、残り魔力が１になるよう他全ての魔力を消費することで発動できる。

　使用者の傷、欠損、状態異常、病気等を完全に回復する。

　また、この魔法の魔力消費による疲労は同時に無効化される。

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　……あれ、なんでだ？　最後の札、その一枚だけが鑑定できない。

　仕方がないから額に当てて中身を確かめてみた。

＜能力の札・・・『回復節約Ⅲ』＞

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『回復節約Ⅲ』

　回復する効果のある魔法・術技・能力による魔力の消費量を超大減少させる。

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＜この能力を習得しますか？＞

　回復の節約……自力で覚えようと思えば覚えられる能力か。

　なるほど、だから今の能力の札は宝具扱いにならず、俺の『宝具理解』じゃ調べられなかったんだな。

　薄々わかってたが、なんて融通（ゆうずう）が効かない能力なんだ……まあ、札ならこうして自力で見れるから、今回はいいけども。

　とりあえず札は置いといて、『メディック』の指輪から考えるか。

　効果は簡単に言えば「使った魔力を再利用して自分の回復ができる」というものだ。

　明らかに俺じゃなくてロナ向きだな。魔力を使えば使うほど勝手に回復していくというのは彼女と相性がいい。

　例えば［ハドルオン＝バイゼン］なら大幅回復しながら、防御力を手に入れる……なんてことになるな。

　はは、こう言った組み合わせをクレバーに考えるのって、なんだかワクワクするぜ。

　ならば次の「刺した相手を癒すナイフ」だなんてヘンテコな存在の『メディメス』はどうだ？

　これは消費魔力が５０であること、そして「魔力量によって変化する」みたいな一文がないから、おそらく使用方法さえあっていれば誰が使っても一緒の効果が現れるんだろうな。

　また、魔力さえ込めなければ、普通のナイフとして使えるみたいだ。

　試しに自分の腕をこれで軽く傷つけたら、普通に血が出てきた。

　い、痛い……。

　で、今度は効果を実体験するため、『ルナル』の効果で消費量を１にしつつ魔力を込め、自分に突き刺した。

　内容通り刺した箇所に痛みが湧かず、逆にさっきつけた傷がきれいに消える。

　かるーく刃先でつつく程度でも、突き刺したってことになることもわかった。

　べ、別にこわくてそのくらいしか試せなかったわけじゃないさ、俺は紳士だから、安全性を確かめただけだぜ……うん。

　とりあえずこれだけできるなら、有用だと認めよう。

　もしかしたら今後、これのおかげでもうポーションを買わなくて良くなったりするのかもしれない。

　そして、何よりこの箱の中で一番インパクトが強かったのがこれ、魔法の札［ライフオン＝オルゼン］だ。

　まあ、どうみたって究極魔法だし、一番の当たりだ。

　効果は魔力量が残り１まで減る代わりに、文字通り身体を完全に回復できる。

　ただ、もとから２００以上魔力がないと発動できないから誰でも使えるってわけじゃないし、コストが重いし、一日一度の制限があったりもするが……それを考えてもなお、非常に強力としか言いようがない。

　病気まで治るこの魔法、ヘタをすれば何億ベル出してでも喉から手が出るほど欲しい人間だっているだろう。

　家族宛に送ってもいい……が、その送った先で誰か悪い奴に内容がバレ、この札が争いの種になるなんてことになったら目も当てられないか。

　こういうタイプの面倒くささは嫌いだぜ。ジェントルじゃない。

　ま、深く考えずに単に強力な回復手段としてロナに覚えてもらうのが無難だろう。

　この魔法を使ったことで、＜月光風斬＞などのように、同じ類の初歩の魔法をついでに覚えられたら、『回復節約Ⅲ』の札も意味あるものになるしな。

　よし、それで行こう。

「ザンー、おさきにー。調べ終わった？」

「おお、おかえり」

　調べ終わったところでちょうど、ロナが乾かせたばかりであろう長髪をなびかせながら部屋に戻ってきた。

　……肌がいい感じにしっとりとしている。

「とりあえず、どんなものがあったか話すぜ」

「うん！」

　俺は一つずつ、内容物の説明をした。

　彼女は『シューノ』と［ライフオン＝フルゼン］に驚きの表情を浮かべ、逆に『フォルテット』には微妙な反応をを見せる。

　つまりロナもだいたい俺と同じようなを感情を抱いたってことだ。

「ほんとに宝具ってすごいよね……！　でも意外だったよ、パンドラの箱から宝具じゃないのも出るなんて」

「四つ入りの箱から出てきたからな、最低三つは宝具が確定で、それ以降は決まってないと見るぜ。　ただの憶測だが」

「ああ、なるほどぉ……」

　納得いったようにうなずくロナを眺めながら、俺は渡す予定だった札二枚と指輪を分けて差し出した。

　残りの宝具はナイフだけ俺のモノとして手元に残し、あとは見えやすいように並べ直して彼女の前に広げる。

　ふふふ、これでロナがどれを選ぼうが、また俺たち仲良しコンビは一歩強くなれるぜ。

「さ、そいつらはロナが持つといい。あとはここから好きなものを好きなだけ取っていってくれよ。今回は一応全部、ロナにも使い道はあるからな」

「……？」

　ロナは彼女の取り分として渡したものを手に乗せながら、キョトンとした顔を浮かべる。

　え、なに。

　一体どうしたというんだ、俺はなにか変なこと言ったか？

　わからない……まるで検討がつかない。

「ど、どうかしたか？　ん？」

「え、あ……いや……これ、私にくれるの？　なんで？」

「なんでって……え、なんで？」

「私は受け取れないよ、これ」

　そう言って、ロナは三つのアイテムを俺に返してきた。

　……え、どうしよう。

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