病弱な僕が異世界転生しても英雄になれなかった話 ~それでも僕は幸福になりたい~

十重二十重

プロローグ / エピローグ

 これは神様から聞いた話なんだけど、異世界は互いによく似た世界になりやすいんだって。


 何の話かって? この世界の話。僕についての話でもある。少し話しておきたくなったんだ。


 僕の故郷ではWEB小説っていうのが流行っていてね。この辺でいうと吟遊詩人の詩が近いかな。大勢の人たちが自分や他の誰かを楽しませるために物語を作るんだ。中でも人気があるのが異世界物ってよばれてる種類の物語でね。こことは異なる世界に旅立った主人公が、神から授かった力とか、前世の知識を駆使して活躍するお話なんだ。

 舞台となる世界にはエルフやドワーフやドラゴンがいて、神様や魔王が出てきたりもする。魔法が存在するすることも多いね。まあこことよく似た世界になっていることが多いかな。


 話に脈絡がない? そうかな。そうかも。まあ聞いてよ。


 神様が作る世界も同じでね。ああ、この世界とは別に異なる世界がたくさん存在しているんだ。こっちの世界ととそっちの世界は独立していて、それぞれの世界を包むようにさらに外の世界が存在している。そこに住む神々――外の世界の、僕らの知らない神々。適切かどうかわからないけど、他に適当な言葉もない――が生み出した無数の世界が存在しているんだって。

 それらの世界が似通ったものになるっていう話。


 神様にとっても世界を一から創造するのは大変な事らしくてさ。僕らみたいに文化を築く生命が育つことも稀なんだって。

 だから他の神様が作った世界とか、人間が想像で作った物語世界を参考にすることが多いんだ。僕の故郷の物語もね。


 実はこの世界もそうなんだ。僕の故郷の物語を元にして作られた世界なんだ。


 誰から聞いたかって? そりゃ神様だよ。

 ああ、少し酔ってはいる。浮かれすぎたかな。君にこんな話をしていられるのがどうにも嬉しくて。

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