第30話 お主、もしや伝説の……!?
「お主はこの女に何度も記憶を
「う、嘘だよね? 静音さん? …オレの……オレの
天音の意思を乗っ取ってる魔神サタナキアはそう断言した。オレは魔神であるサタナキアが言ったその事実が、嘘であると本人である静音さんに確認するように聞いたのだが……
「……」
だが当の静音さんは何も応えなかった。ただ左手で右の肘を押さえるようにし、下を向いているのだが、その視線はあちらこちらと忙しなく動き、落ち着きがないように見えた。明らかに何かを隠している行動そのものである。
「ふん。目は口ほどにモノを言うとはよく言ったものじゃが………
サタナキアは静音さんの事を『アイ』と呼んだ。前に言っていた静音さんの別の名前『アイギス』のアイで『アイ』ということなのか??? オレにはもはや何が真実で、何が嘘なのか判らなくなってしまっていた。
「うん? よくよく見れば、そこにいる農夫は……アルゼ? お主『アルゼ・タイムス』ではないか!? そうであろう? 懐かしいのぉ~、ほれ
サタナキアはオレの目の前にいる敵役の農夫であるアルフレッドのおっさんに、まるで旧友と再会したかのように話しかけていた。
「……誰だべおめえさ? オラしらねぇぞ。…それにオラの名は『アルゼ』なんて変な名前じゃねぇべさ、『アルフレッド・マークス3世』って親に付けてもらった立派な名前があるんべ」
農夫のおっさんはサタナキアが言っている事が、本当にわからないようだ。
「そ、そうか……やはりお主までもそうなってしまったのか。またアヤツに消されたのじゃな。昔は共に戦った仲だというに……。そうか、妾のことをまったく覚えておらぬのか……」
そう呟くと天音の意識を乗っ取っているサナタキアの後姿は、何故だか少し寂しそうに見えてしまった。
「も、もしかして……あのおっさんも『記憶』を消去されたのか?」
オレは自分のことではないのに嫌に不安に駆られ、サタナキアにそう質問する。
「そのようじゃの。前回の勇者と共に魔王を倒した仲だったのじゃ。コヤツも今はこんな
声だけでサタナキア本体の姿は見えないのだが、そう語るサタナキアの声は今にも泣き出してしまいそうな声をしていた。
「そ、そうなんだ。このおっさんも記憶を……」
オレはその事実にショックを隠しきれない。これも全部静音さんがしたことなのかよ? 一体何でそんなことを……。
「(ぶんぶんぶん)」
オレのことも忘れてんじゃねぇぞ! と言わんばかりに激しく手をぶんぶんと振っているクマB。
「じ、じゃあこっちのクマ公も、もしかして……前回の勇者と共にしていたのか!?」
「焦るでない! す、少しだけ待たれよ……」
サタナキアは気持ちを落ち着かせているのか、焦るオレに対して「少し待て……」との間をとっていた。
「よし、おkなのじゃ! してこっちのクマは……クマは……お、お主、もしやで、伝説の!?」
「で、伝説の……!?」
「(ごくりっ)」
オレもクマBも、サタナキアさんが次に口にする言葉を待った。
「(もしかしてこのクマ公も『伝説の勇者ご一行様の仲間』とか言うじゃないだろうな? もしそうなったらオレの立場はどうなっちまうんだ? このクマ公に平伏しねぇといけないのか?)」
オレは「このクマ公以下になるのか……」というプレッシャーに押しつぶされそうになった。
「…………いや、『ただのクマ』のようなものなのじゃ!」
「ズコーオッーツ!?」
オレはサタナキアが「で、伝説の……」などと、あまりにも煽るからその言葉に期待して力を入れながら前のめりになって話を聞いていたのだが、そのあまりにも普通の
「ほっ」
クマBは記憶を
「(せ、せっかくシリアスな話だったのに、だから毎度毎度『オトす』なよな!)」
この『あな嫁』が
「して、お遊びはここまでなのじゃ! 小僧! しかと妾の話を聞くがよいわ!!」
「(おっとぉ~強引なまでの話のすり替え術! もうこれは開き直りとも言えるレベルだぞ♪ それにいつの間にか『
次回予告:静音さんの『嘘』と『正体』が明らかになる! ……かも???
ジョブチェンジしながら、第31話へつづく
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