第17話

 久しぶりに地元の駅に降り立って、家の方角に向かって大通りを歩いていると、街並みが微妙に違っていることに気付いた。


昔あったレストランが美容院になっていたり、あったビルが壊されて駐車場になっているかと思えば、昔駐車場だったところに新しいビルがたっていたり。


盆や正月に帰って来る時は気付かなかったけど、いざ住むと決めて歩くといろんな変化がわかる。


駅からすぐの通り沿いのビルの2階に、感じのいいオフィスを見かけた。


道沿い一面ガラス張りでその中には観葉植物がたくさん茂っている。


中の壁は真っ白でデスクの板はアンティークの木材、足は近代的な金属。


…好きかも…。


しばらく眺めていたら、窓の方にいかにも人の良さそうな少しマヌケそうな男が背伸びしながらやってきた。


そして、ウンベラータの葉に頬をスリスリしたかと思ったら、不思議な踊りを始めた。


踊りと思ったらストレッチ運動だったようだ。


男は股を開いてしゃがみこみ、両手を胸の前で合わす、ヨガの花輪のポーズ? を決めた。


気合が入っているのか鼻の穴が全開だ。


その時、目が合った!


「!」


「!」


向こうはものすごく恥ずかしかったようだが、こちらも同じくらい気まずい。


見つめ合っててもしょうがないので、軽く会釈をしてその場を去った。


男も花輪のポーズのまま会釈をした。




「HR DESIGN OFFICE  デザイナー急募 経験者優遇」


ビルの張り紙がチラっと目に入った。



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