俺、ケンジ。異世界でおっさん転生しちゃったンゴww

しんげきのケンちゃん

1章

第1話 プロローグ

俺はケンジ。平成生まれの、現在は社畜だ。


それなりの愛情で育てられ、それなりの進路を歩み、それなりに社会の荒波にもまれながらも、今日も元気に出社するところだ。


いや、元気には言いすぎたかもしれない。

この世界に救いなんてものはあるのかわからない。


インターネットの普及は人類の距離を狂わせて利便性を向上させたが、結果的には何でも理解できる退屈な環境を生み出してしまった。

昨日も真夜中に、地球の裏側からログインしてる外人にFuck you! と叫びながらマシンガンをぶちこんでひゃっはー! と奇声を上げてお祭り騒ぎだったり、その後背後からコンバットナイフでするっと首を落とされてボディを死体蹴りされてなおリアルの俺はとち狂ってヘドバンを決め込んでいた。


そんな殺伐とした世界で俺は武勇の限りを尽くしたい。

闘争を求めているのかもしれない。


なんてな。


戦争の無い平和な世界が尊ばれる世の中だ。人の命を粗末にしてはならないのだ。


……などと、いつものオレンジの通勤電車が到着するのをホームで待つ間に己が欲望を熟考していた。


今日も会社に赴くのだ。あぁ、眠い。


間もなく電車が到着するというアナウンスが流れる。

今日はドア前を最善キープできた。きっと座れるだろう。

早く意識を手放したい。夢の中で私欲の限りを尽くす楽しい幻想を謳歌したい。


……えっ。


ちょん、と背中を押された気がした。

1歩、2歩とよろめきながら前に踏み出してしまうのだが、足に力が入らなかった。


ど、どうした俺!? 止まれ、止まれよ!?

3歩目はついに地に足がついていなかった。

そう、俺は線路へと身を乗り出したのだ。


うそだろ!? はあ!?


言うことを利かない身体。


かろうじて動いた目線の先には、いつものオレンジ色の電車のガラスを隔て、運転手の驚きの顔が窺えた気がした。そりゃな、突然ならそんな顔にもなるだろうよ。

俺だってこんなのまっぴらだ。


あぁ、今からこの列車は俺の血で真っ赤に染まるんだろうな。

それが、俺の頭に最後に浮かんだ思考だった。

そして世界が暗転した。

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