第六話 一緒にお出かけ
Szene-01 レアルプドルフ、三番地区内
ダンの家から出発したエールタインとティベルダ。
ティベルダは、風になびくエールタインの銀髪を嬉しそうに見ながら付いて行く。
手はしっかりとつながれている。
三番地区は町の中央で交差する街道に囲まれたエリアの一つである。
レアルプドルフは地区で分かれており、全部で六地区。
街道の交差点周辺が繁華街となる。
繁華街を中心に東西南北に街道が通る。
東西街道をはさむ西側が一番と二番地区。
東側が三番と四番地区。
二番地区の南側で南北街道沿いにあるのが六番地区。
そして、三番地区の北側に五番地区がある。
「きれい……」
「ん? 何かいいもの見つけた?」
「はい。エールタイン様の髪がとてもきれいです」
「そ、そう?」
耳の上の髪に手櫛を通す。
思わず女の子らしい仕草をした。
「髪の毛をほめてくれるのはヨハナとヘルマぐらいだから照れるよ。たいていの人は目を見開いて驚いた顔をするから」
「きれいだから驚いているのではないですか?」
「この町は色んな人がいるから、町の人ってどんな人でも驚きにくいはずなんだ」
「身近な方たちがきれいと言ってくださるなら、気にしなくても大丈夫です!」
「ティベルダって明るくて前向きな子だったんだね」
道にある石に
「あ、あの……駄目でしたか?」
「そんなことないよ。心を閉ざしているかと思っていたから安心したのさ」
「嫌いになっていませんか?」
「その逆だよ。心を開くまでの時間が必要無いと分かったから、これから楽しくなりそうだなって思える。だから好きだよ」
ティベルダはにぎる手に力が入る。
「エールタイン様に出会えて私、町に来て良かった――」
「来たばかりなのにそう言ってもらえて何より。ただ、戦うことはしなければいけないから楽しいばかりではないけど、戦い抜くために……楽しむ時間を作るために、仲良くしようね!」
「はい!」
Szene-02 レアルプドルフ、二番地区前東西街道
「ふん!」
「……」
「何よ!」
「……」
「全然見つからないじゃない!」
とある女性見習い剣士が憤慨しながら街道を歩いていた。
後ろには、見習い剣士の荷物を全て持った小柄な奴隷少女が付いている。
「あの男達の話だと、最近現れているはずなのよね。あんな奴らが見ているのに、なぜ私が会えないのよ!」
「……」
レアルプドルフは街道が交わる町。
近隣の町に比べ、一段上の活気がある。
交通量が多いため、街道は石畳にされたばかり。
運び屋たちの移動音をはねのけるような靴の音が響く東西街道。
新しい石が軽快な足音を際立たせているのだ。
その靴はよく手入れをされた皮のロングブーツ。
戦闘防護用であるが、おしゃれな外着が上手くコーディネートされている。
戦闘用ブーツにも外着を合わせているという所にこだわりを感じる。
「ヒルデガルド」
「はい」
「今日もよく手入れされていて気分がいいわ」
「ありがとうございます」
ブーツの手入れは奴隷が頑張ったようだ。
背筋を伸ばし、胸を張りながら歩いているルイーサ。
二番地区出身の剣士見習いである。
父親は上級剣士だが、町が攻められた際の防衛で脚を負傷したため戦いに出ることは無くなり、師匠として剣士の育成に精を出している。
そんな父を誇りにしているルイーサは、私がその剣士の娘だとお高くとまるようになってしまった。
「ねえ、ヒルデガルド」
「はい、ルイーサ様」
「……何でもないわ」
「はい!」
「なんで喜ぶのよ」
「いえ、何でもありません」
普段外では表情を変えないヒルデガルドがほほえんでいる。
ルイーサが言おうとしたことがわかったようだが……。
ほほえんでいるということは良い事であったのだろう。
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