第35話 神託
リクトはさっそくスキル【神託】を使い、世界中に散らばっている聖職者全てに今から六年後に起こる事を伝えた。
この神託を受け世界は混乱を極めた。ある者は祈り、ある者は神託の内容を秘匿し、またある者は対策を講じる。共通の敵を前にしても人類が一つになる事はなかった。
「こりゃダメだわ。皆自分勝手に自国だけを守ろうとしてやがらぁ」
「ん。誰もここに来ない……」
「嘆かわしい……」
リクトはこの時点で全てを救う事を諦めた。
「……俺はちゃんと伝えたからな。それでも協力しねぇってんならもう知らんわ。さて、こちらも準備を始めようか」
リクトは自分の領地を全て背の高い外壁で囲い、更に魔族が侵入出来ないように結界を張った。外壁は魔族が触れると浄化される仕組みとなっている。これで領内の守りは完璧だ。ちなみに、領内から出るのは自由だが、入領はリクトの許可が必要となる。門にインターホンの様な物を取り付け、城からモニタリングしている。まだ稼働させてはいないが。
最近領内の人間が増えた気がする。あの外壁をみてここが安全だと思ったのだろう、移住希望者が殺到しているようだ。リクトは来る者は拒まず受け入れる事にしてある。領内が埋まるまでだが。
そしてあっと言う間に六年が過ぎた。深夜、魔神グレマンティスが再びリクトの前に姿を現した。
《六年ぶりだな、さあ……答えを聞かせてもらおうか》
リクトは中指を立てながら魔神にこう言った。
「死ね、バーカ」
《ふっくくくくっ。それが答えか。良いだろう……。ならばこれよりお前も敵とみなし襲う。後で後悔しても手遅れだぞ》
「お前こそ……。人間界に来た事を後悔させてやんよ」
魔神は笑いながら姿を消した。
その日、世界は終焉を迎えた。世界全土、全ての国に魔族が同時に現れ、人間を狩り始めた。まさに不意打ちそのもの。魔族は地面から生えてきた。不意を突かれた人間はなす術なくその数を激減させていく。今のところ無事なところはリクトの領地と、教会本部、残りは聖職者が結界を張っていた場所のみとなっていた。
それ以外の場所にいた人類は魔族に食われ、犯され、殺された。魔族は人間を玩具のようになぶり、蹂躙していく。それに呼応するように魔物も凶暴化し始めた。
世界はまさに地獄と化していた。多少強いだけの冒険者が数名いただけではとても勝てる状況にない。いくら強かろうと数の暴力には勝てないのだ。
《ギヒッギヒヒヒヒヒッ……クチャクチャ……》
「あぁぁ……っ、Sランク冒険者が殺られた……! もうおしまいだ……っ」
「誰か……助け……ぎあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
そんな中リクトの領地はと言うと、相変わらず平和そのものだった。
「準備しておいた甲斐があったなー」
「ですね~。魔族の皆さん……どうやっても入れないみたいですね~」
魔族は一切領内に侵入出来ていなかった。ただ、天井の結界に張り付いているものだから空が暗くて敵わん。
「そろそろ一回排除しとこうか」
リクトは結界に聖なる気を流す。
《《ギヒィィィィィィィィィッ……!?》》
すると結界に張り付いていた魔族はすっかり浄化され消えた。
「この領内は世界で一番安全かもしれませんねぇ……」
「当たり前だろ。悪いが俺は協調性のない人間を助けてやるほどお人好しじゃねぇ。これで世界も少しはマシになるんじゃねぇの」
世界はどんどん荒廃し、魔族が地上を支配していく。地上には安全な場所はもう数ヶ所しか残されていなかっだ。
一番最初に気付いたのは冒険者だった。いつものようにダンジョンに潜っていたら地上が大変な事に。しかし、ダンジョンに魔族は侵入出来ないようなのだ。
こうして、世界はリクトの領地、ダンジョン内にいた冒険者、教会本部と各地の教会を残し、全滅してしまった。
「リクト、そろそろ……出る?」
「ああ。生き残りを集めてくるわ」
リクトは領地から飛び去り、魔族を殲滅しつつ生き残っている人間を探す。そのためにスキル【ライブサーチ】を作った。リクトの視界の端には世界地図と、人間の生命反応が全て見えている。
「とりあえず近場からいくか」
リクトは近くにあった教会に向かった。教会は聖なる光で囲まれ、まだ何とか無事のようだ。
「邪魔だ、退け【サンダーレイン】」
《ギギギギギギギギギギィィィッ!?》
リクトは教会を取り囲んでいた魔族を一掃し、扉を開いた。
「え? あ、あなた……は?」
中にはシスター一人に子どもが数人いた。どうやら食べ物も切れ、水すら無い状況に見える。
「リクト・マイスター。助けて欲しいか?」
「た、助かる……のですか!?」
「ああ。助けてやろう。厨房に案内してくれないか? まずは食べ物を与えよう」
「こ、こちらですっ!」
リクトはシスターの後に付いていき、厨房に着いた途端、シスターを食った。
「な、何をなさるのですかっ!」
「まさかタダで助かるとか思ってないよな? 神託を無視して協力を拒んだのはお前達だ。助かりたいならこの身体を使って奉仕してくれよ」
「……すれば皆を助けていただけるのですか?」
「ああ。約束は守るさ」
リクトはシスターが孕むまで抱き続けた。そして煮込んだ野菜スープを子どもたちに振る舞った。久しぶりの食事に子どもたちは涙を流しながらがっついていた。
食事後、リクトは女の子たちだけを部屋に集め奉仕させた。最年長が成人直前、そこから一歳ずつ下に三人いた。今最年長の女の子がリクトに身体を使って奉仕している。
「これで助かるのぉっ?」
「ああ、助けてやる。約束しよう」
「わかった! じゃあ……いっぱいするっ!」
リクトはこんな事態でも相変わらず平常運転を続けるのであった。
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