私は友達がほしい症候群 ~クラス転移しちゃったから異世界で友達を作ります

みくりや

第一章 異世界転移の子供たち

第一話 異世界への転移

※第一章はかなりドギツイイジメや虐待の内容があります。ご注意ください。




 私、花咲 藻子(はなさきもこ)は中学二年生になりました。突然ですが、私は学校でずっとボッチで『ふひっ』と変な声を上げてしまう残念女子です。だってコミュニケーションが苦手だからね!


と、とにかく私は友達が欲しい……。

ふひ……せめて一人ぐらい友達になってくれてもいいじゃない?







 ある日の朝の教室、ショートホームルームの時間。先生が連絡事項を話している。


「えーと、みなさん!おはようございます。最近は感染病が流行っていますので――――





キュィイイイイイイイン!






「うわっ!」

「なんだよこれっ!!!!」

「お、おちつきなさい!」

「ひぃいいいい!!!!!!」



 劈くような音とともに足元が光りだし、周囲の生徒達が驚いて騒めいている。床に描かれた線や模様は、物語にでてくるような巨大な魔法陣のようだ。


 徐々に光が強くなっていく。

 それにつれ生徒達もびっくりして大きな声を上げる。大混乱の中、彼らは光に包まれてく……。たまらず私も「ふひゃっ!」と変な声をあげてしまう。

そしてその光が限界まで強くなり、次の瞬間――――




世界が真っ白になった。




…………



「……?」


 刹那の静寂の後……


「おおおおおおおおおお!!やりましたぞ!!」

「成功です!!」

「これで我らは救われる!!!!」


 中高年の男性を中心とした感嘆の渦に包まれた。

 私が恐る恐る目を開けてみると、今までいた教室とは全く別の景色、剣と魔法のファンタジーの世界が広がっていた!






『ようこそシュバルツェルンブルグ王国へ!』






 私は周囲を見渡してみる。

 まるで中世ヨーロッパの城を思わせるような石造りの柱。高級な刺繍の入った赤い絨毯。図鑑に載っていたような西洋風のランプ。壁には剣と盾が掛かっている。ランプとは別に魔道具の間接的な光が自然な明るさを演出している。そして足元には、先ほどの光と同じ紋様が描かれていた。

 私たちの周囲は、図書室の神話の本の挿絵で見たような神官や王族、貴族のような服装の大人たちがずらっと並んでいた。


ちょっと、というかかなり怖いんですけど!


「初めまして、勇者様方。突然のことで驚かれているかと思います。これから順を追って説明いたします」


 一歩前に出てきた澄んだ声の美しい女性。ぱっちりとした愛らしい目、金色のロングヘア。高貴なティアラなどアクセサリーや衣装は格の高さを伺える。


「わたくしはシュバルツェルンブルグ王国の第一王女シェリスと申します。以後お見知りおきを」


 スカートの裾を少しだけ摘まみ上げて、少し膝をおとし王女らしい優しい微笑みでポーズをとっている。自然な仕草にみんな見れている。だって物語のお姫様そのものだし。


「ゼファー、皆様方に」

「はっ、かしこまりました。」


 王女の横に控えていた60代くらいのダンディーで白髪のおじい様が、私達の前に立つ。能力の高さと王族への忠誠心がわかるような、年齢を感じさせない立ち振る舞いが老練さを物語っている。


「この王城で執事をしておりますゼファーと申します。以後お見知りおきを。ご質問は最後に承りますので、しばしご静粛にお願い申し上げます」


「さて、まずここはシュバルツェルンブルグ王国という国でございます。そしてこちらが我が国家元首ギルノワ国王であらせられます。」


 ゼファーが片膝をついて、右手を胸元に、左手は後ろにして礼を尽くす。これがこの国の最上位の礼の仕方なのだろうね。他の貴族や神官ら全員同じように跪いている。


「我はギルノワだ。勇者殿。突然のこちらの世界に呼び寄せてしまったことをお詫びする。ただ我々も国家の存亡の危機が迫っており、すがる思いでの事だ。赦せ」


 さすが国王、すごい威厳を感じる。50代ぐらいの貫禄あるおじさん。金髪のライオンみたいで髪と髭がつながってる。なんだかすこし顔色がわるそうだけど……。


「つぎに――


 王女や王子たちも順番に挨拶していく。第一王子はもう成人で20歳くらいでキラキラしている。第二王子は高校生から大学生くらいでやっぱりキラキラしている。第三王子以下はまだ小さいので公には出ないそうだ。そして一通りの紹介が終わって、やっと本題のようだ。


「皆様にはこの国、ひいてはこの世界の救世主となっていただきたいのです。我が王国の宮廷祈祷師によるご神託)によると、魔王の復活が近いと……。歴史を鑑みまして30年周期で魔王が復活し、人々に猛威を振るうというように伝えられております。ぜひとも皆様方には魔王を打ち滅ぼしていただきたいと存じます」


 予定の魔王復活まであと2年ほどあるらしい。でも歴史書に書かれているなら祈祷師は関係ないじゃない?なんて突っ込みたいけど、私は空気を読んだ。ふひひ。

 さすがにみんな怪しいと思ってるのか、う~んと唸っている。勝手に呼んでおいて戦えっておかしいもん。

でも――


「よーし、みんなっ!やってやろうじゃないか!?それに僕は困った人を見過ごすことはできないよ!」


 クラスの人気者ので王子に負けないぐらいキラキラしているのは飛鳥井 陣(あすかいじん)くんだ。文武両道でみんなに優しい正義の人だ。


「そうだっ!私たちがやらないで、誰がやるとういうのだっ!」


 負けず劣らず正義の人の城島 麗華(じょうじまれいか)さん。委員長って呼ばれてて、綺麗な青っぽいポニーテールがまるでメインヒロインのようだ。


「あ、あーしもやるっ!みんなもそう思うでしょ!?」


 それに追随するのは鈴沢 雲母(すずさわきらら)さん。可愛くてギャルで金髪でとにかく派手。政治家の娘らしく我儘で私をイジメてくる。


「俺も俺もっ!」

「私もーーーっ!」

「それなーっ!」


 今度はみんな明るい声でわーわーと騒いでる。

あっ!でも今女王様が二ヤって笑ったよ?

だれも気が付いてないの?


「先生は反対ですっ!戦いなんて危ない事はさせられない!」

「まーまー美咲ちゃん現代じゃないぽいし?楽しんじゃおうよ?」

「えっ! ええぇ~~……。 で、でもぉ~~」

「ほらほらっ!いつも美咲ちゃんラノベすきでしょ?体験できちゃうよ~?」

「そ、そうよね!」


とあっさり陥落。というか大黒先生もこっちに来てたのね。


 大黒 美咲(おおぐろみさき)先生は担任の女教師。生徒と仲が良いけど、なぜか私は目の敵にされている。


 私はこういう流れって苦手だな。

 コミュ障だからっていうのもあるけど、一人の発言でバラバラだった動きが急に磁石がおかれたように変わるのって、なんだか怖い。

集団心理?洗脳?心理学?


うーん?このまま、王国の人に従って大丈夫なの?







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る