◯◯署広域捜査課保管資料No.627059

・20○○年△月□□日 失踪者細川守(当時20歳)に対し、細川月子(母)が行方不明者届を提出。

当局は同年△月□□日にこれを受理し、捜査を開始。


失踪者と当時友人関係にあった間宮智音(当時20歳)も同じく足取りつかめず。失踪者は失踪前夜に、椎名冬(当時18歳)からの告白を断った模様。当局は何らかの恋愛上のもつれがあったとみて初動捜査を展開。関係者に事情聴取を行う。


【20○○年△月□□日 事情聴取 対象者:椎名冬】

当時失踪者は、同じく失踪した間宮智音、椎名冬、水瀬麻衣(当時20歳)と交友関係にあった。また失踪者はweb小説投稿サイトを「細川八雲」名義で利用しており、自身で小説を掲載していた事から、間宮智音、水瀬麻衣は失踪者の小説の読者という側面もあった。

椎名冬は本件を「間宮智音が細川守を誘拐した」と考えている。椎名冬の証言によると、間宮智音は失踪者に対し、度を越した独占的私情を持っており、これまでにも数回、失踪者を軟禁状態に置いたという。なお、これらの件に関する届出は一度もなされていない。


当局では椎名冬の失恋による凶行も視野に入れて、引き続き失踪者と失踪原因と関連すると思われる間宮智音の足取りを捜査。


水瀬麻衣は細川守が失踪した当時、イギリスに滞在していた事から直接的に本件へ関連していないとして捜査対象から除外。


同年△月□□日 防犯カメラに失踪者と間宮智音と思われる女性の姿が記録されていたことが判明。失踪者と随行者ずいこうしゃは鉄道を利用し、奈良県へ向かった模様。これより後、××―奈良間での広域捜査に移行。当局長により、捜査網が公表される。当局は広域捜査共助規則に則って、広域捜査隊を設置しこれを運用。


同年△月□□日 奈良県吉野郡天川村 洞川どろがわにある温泉旅館「冬之里」に一日滞在したことが判明。

また、当該旅館は佐々木美佐江ささきみさえ(椎名冬・叔母)が経営しており、同年△月□□日~同月□□日まで失踪者を含め、計4名で滞在しており、比較的地理関係に明るいものと思われる。

佐々木美佐江の証言により、随行者が間宮智音であったことが判明。また佐々木美佐江は、「交際しているように見えました」と、以前の失踪者らの違いを指摘。


過疎地域であるため、防犯カメラ台数も少なく、捜査は難航。聞き込み捜査の結果、失踪者は佐々木美佐江に「川を見てきます」と言い残し、間宮智音と共に◇◇川のある山間部へ向かったことが判明。

捜索隊を設置。翌□□日、捜索隊による山間部捜査開始。しかし捜査は依然として難航。当局は捜索隊派遣総数を増やす。また、◇◇川付近の捜索も開始。


同年△月□□日 ◇◇川で間宮智音が当時身に着けていたものと思われる腕時計を発見。当局は捜査網を◇◇川付近へ修正。

しかし、以降、現在に至ってもなお、足取りはつかめず、20○○年△月□□日、本件の捜査方針を「失踪者と間宮智音による心中」に変更し、現地での情報収集に捜査方法を移行。これにより捜索隊は一時凍結。

捜索隊派遣による再捜索は、本件に関する重大な証拠の発見がなされた時、あるいは当該捜査本部による再捜索決定または当局長による捜索隊派遣命令が下された時に限定し再捜索にあたる。

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