36

 床から天井まで大きく開かれた窓から夕陽が射し込んでくる。夕刻の王城の廊下は黄昏どきの陽射しに照らされ、明るいところは眩いほどに明るく、暗いところは夜よりも暗い翳りに沈んでいる。

 ジアンは無意識のうちに日陰ばかりを選んで歩きながら、手の中に残ったわずかな書類をまるで命綱のようにきつく握りしめていた。

 いまいるこの廊下は、ジアンの身分では立入りを許されていない区域にある。見つかれば捕らえられ、叱責され、場合によっては罰を受けることになる。人目を忍ぶ歩き方となるのは当然のことと云えた。

 王城に出入りを許される者は多い。貴族は云うに及ばず、議会に席を持つ議員たちから王府に勤める官吏、騎士、兵士、侍従、侍女、下男や下女に至るまで。

 ただし、彼らはみな、その階級や職務に応じて立ち入ることのできる場所が厳密に定められており、それを破ることは許されていない。もしも、許可されていない区域に立ち入ったことを見咎められた場合、問答無用で警護騎士に斬りつけられたとしても文句を云うことはできなかった。

 ジアンはもちろんその規則の重みをきちんと承知していたし、常であれば決まりごとを破ったりなどしない。だが、いまの彼にはそうした小心者の枠をはみ出さざるをえない深い事情があるのだった。

 囚われの身となっているリオネル・クザンの居所を正確に掴み、彼を救出するための道を探る。

 それこそが、ジアンがシャニョンから与えられた、もうひとつの使命だった。


 あの日、優雅な仕種で茶を飲みながら、ユベール・シャニョンはこう云った。――僕にはどうしてもリオネル・クザンが必要なんだよ。

 革命指導者として国じゅうの同志に蜂起をうながし、一同を率いてきたはずのシャニョンが、身近な存在であったとはいえ、手足のひとりにすぎないはずの男にこうも執着していたとは、とジアンは驚いた。たかが事務屋ひとり、いくらだって替えが効くはずだ。

 知識が深く、陰謀に長け、数字に強く、たしかにすべての条件を兼ね備えた者はそういない。だが、ひとりですべてを補うことができないのならば、ふたり、いや三人をあてることでいくらでもその代替とすることはできるはずなのだ。シャニョンの傍で彼の役に立ちたいと思う者は、同志の中に大勢いることだろう。

 そういった意味のことをぼそぼそと口にすれば、シャニョンはジアンに向かって深く微笑みかけながら、うん、まあいいよ、と頷いた。

「誰かに理解してもらいたいわけじゃないから」

 頷くこともできないジアンは、その不気味な微笑みをただ見つめている。

「とにかく、リオネル・クザンなしに革命軍の再起はありえない。彼を救うことは革命を成功させることと同義だと思ってくれたまえよ。ね、同志ジアン」

「でも、どうやって……」

「なにも、きみひとりでどうにかしろなんてことは云わないさ」

 できるとも思ってないしね、と云いながら、シャニョンは空になった器に茶を注ぐ。

「きみはきみにできることをしてくれればいい。僕たちは僕たちのするべきことをする。それだけさ」

「できること、ですか」

 うん、とシャニョンはじつに軽い調子で頷いた。

「ああ見えてもリオネルは貴族なんだ。彼の取調べは監察府が担当する。城内に拘留され、外部との接触はいっさい禁止。警備には蟻の出入りする隙間もない。むろん、僕たちが会いに行くことなんて絶対にできない」

 ああ見えても、と云われたところで、クザンを知らぬジアンにはなんとも答えようがない。だが、クザンがいろいろな意味で貴族らしからぬ男であったことは、噂程度に聞いたことがあった。

「でも、きみにとってはそうじゃないだろう? 同志ジアン」

 ジアンは視線だけを上に向けて、シャニョンの表情を窺うような目つきをした。

「きみは騎士だ。自由に王城に出入りすることができ、城内を歩きまわることができる。そうだよね」

 口調だけはやわらかだが、その目つきは少しも穏やかでない。ジアンは卓の上に置かれた茶に手を伸ばすこともできないまま、じわりじわりと追い詰められていく気配をたしかに感じていた。

 リオネル・クザンという存在が、自身にとってかけがえのないものだったということに気づくのが遅すぎたシャニョンは、彼を取り戻すための手段など選んでいられなかった。まだ生きているうちになんとしても再会し、ともにふたたび立ち上がるのだと、それだけを考えていた。

 シャニョンの切羽詰まった事情など、ジアンにはわかるはずもない。彼にわかることは、自分はもうなにがあっても、この冷酷な指導者から逃れることはできない、という既定の未来だけだった。

「正式に配属されたばかりの新人なので、それほど自由に、というわけでは……」

 日ごろのジアンであれば決して口にしないような謙遜は、しかしシャニョンの冷笑によって容易く粉砕された。

「わかってるよ、そんなこと」

 でもそれは、きみが心配することじゃないよ、とシャニョンは云った。

「何度も同じことを云わせるなよ。きみはきみにできることをすればいい。余計な心配は無用だよ」

 云われたことだけに従っていればいい、とシャニョンは言外にそう云っていた。偉大なる指導者のそうした意図は、ジアンの矜持を深く傷つけたが、そのときの彼に言葉を返すことはできなかった。フォルタン――背後で身体を強張らせるばかりの学生――と自分とは、いまだ危機的状況を脱してはいないのだ。迂闊なことを云えばすぐに殺され、どこかへひっそりと片づけられてしまうことだろう。そして、二度と顧みられることはない。

 そんな目には遭いたくない、とジアンは必死だった。

「きみにはね、クザンがどこに囚われているのか、探ってきてもらいたいんだ。城内のどこかにある牢だということまでは想像がつくけど、それがどこにあるか、いまの僕たちにはわからないんだよ。それに加えて、城の様子を事細かに教えてもらいたい。見取図も欲しいな。警護騎士の区域分担と時間割もね」

「そんな……」

 王城の構造や警備体制は、ジアンが知りたいと思うことさえも許されないほどの機密事項なのだ。

「できないの?」

 まさかね、とシャニョンはやわらかな笑みに冷たい毒を乗せてジアンを睨んだ。

「きみだって国を変えたいと思って、同志となったひとりなんだよね? 使命を与えられれば、それを喜んで果たすことが、きみの望みなんだろう?」

 血脈で繋がる王族に支配され、貴族が幅を利かせるこの国が変わればいいと思っていた。

 自らの無策を増税で贖うような領主などいなくなればいいと思っていた。

 多くの民が政に参画できるような、開かれた仕組みが作られればいいと思っていた。

 誰かが変えてくれるなら。

 誰かが廃してくれるなら。

 誰かが作ってくれるなら。

 そのおこぼれをこちらにも少しわけてくれないかと、そんなふうに思っていた。

 叛乱勢力に加担したのは、自分の取り分を少しでも多くするためだ。

 決して、決して――自ら行動したいと思っていたわけではない。

 痛みはいらない。苦しみもいらない。責任もいらない。でも、うまみだけは欲しい。

 シャニョンが指摘しない、しかし鋭く抉り出したジアンの中に潜んでいた本音は、ほかの誰でもない、彼自身を深く傷つけるものだった。

 もう少しましな人間だと思っていた。

 自分ではなにもしないくせに他人を羨んでばかりいるような、自分はどこにも行こうとしないくせに他人の足を引っ張って喜んでいるような、自分ではなにも考えようとしないくせに批判だけは一人前な、そんなくだらない人間ではないと、思っていた。

 違ったのだ。そうではなかったのだ。

 こうはありたくないと思う人間、自分はいつのまにかそんな存在に成り果てていた。

 まるで、――まるでとうに見捨てた両親のように。

「僕はきみのような同志を誇りに思うよ。賢くて、勇敢で、他を愛する心を知っている」

 嘘だ、とジアンは唇を噛んだ。愚かで、臆病で、自己をしか愛せない僕のことを、シャニョンは嘲り笑っている。

「きっと優れた騎士であるはずのきみが、僕たちの意志に賛同してくれたことを嬉しく思う。だからこそきみには、きみにしかできないことを頼みたいと思うんだよ」

 これも嘘だ、とジアンは眉根をきつく寄せた。僕のことなど、使い捨ての駒程度にすら考えていないのだろう。うまくいかなかったときの代替策は幾重にも、否、僕こそがその代替策のひとつにすぎないのに違いない。

 それでもジアンにはシャニョンの言葉を拒むことができなかった。彼の言葉を拒むことは、ジアンにとってもっとも認容しがたい事実を認めさせることでもあったからだ。

「きみはきっとうまくやってくれる。きみの尽力を僕は生涯忘れないし、リオネルもきみに感謝するだろう。再起した僕たちが革命に成功した暁には、きみには相応の地位を約束するよ」

 そんなことはどうでもいい、とジアンは思った。いまの彼はすでに、シャニョンらの野望が叶うことはない、と冷静に考えている。にもかかわらず彼の言葉を拒むことができないのは、自分自身の愚かさのせいだ。

 ジアンはどうしても認めたくなかった。

 自分がくだらない人間であることを。郷里に捨ててきた両親のように、価値のない人間であることを。

 もしもいまのジアンに、きちんと寄り添い、向かいあってくれる誰かがいたのなら、そうした考え――自分にだけは、ほかの誰にもない価値があると誰かが認めてくれる――こそが間違いであるのだと、そう教えてくれたに違いない。

 自分の価値など自分で決めるものだ。自分にとっての他者がほぼ等しく無価値であるように、他者にとっての自分もそうなのだと、だからこそ己の価値は己の心と行いとで決めるものなのだ。

 しかし、自分以外の存在を愚かなるものと切り捨ててきたジアンに、そうしたことを思い知らせてくれる者はいなかった。

 だから彼は間違っていると知りながら、シャニョンの甘言に乗るしかなかったのである。

「きみはこれから王城へ戻り、もとの職務へと復帰するんだ。なにも見なかった、なにも聞かなかったことにして。首尾よく騎士に戻ったあとは、定期的に、そうだな、三日に一度は僕に便りを寄越してくれないか。こちらからも必要なときに連絡が取れるよう、ここにある名前を全部親戚として届けておいてくれると助かる」

 そしてシャニョンは一枚の紙切れをジアンの手の中へと押し込んだ。

「わかっていると思うけど、下手な小細工をしても無駄だからね」

 そう云って微笑んだシャニョンの瞳には、冷たくもあたたかくもない深い闇が潜んでいた。


 そうは云ってもできることとできないことがある、とジアンは額に滲みだした冷汗を手の甲で拭った。じっとりと湿った額に張りついた前髪を払おうとした指先は、細かに震えている。

 貴族であるリオネル・クザンの聴取を行っているのは監察府だ。

 一般的な官吏とは異なり、監察府の連中には禁忌というものがない。誰を拘束することもできるし、どこに立ち入ることもできる。この広い王城の中をもっとも自由に行き来することができるのが彼らだ。

 王族や貴族は、その身分の高さゆえに下賤な場所――たとえば、洗濯室や厨房など――に足を踏み入れることをよしとはされていない。そういった場所に足を運ぶことを禁じられているわけではないが、そこで働く者たちにとっては迷惑千万である。高貴な立場にある者たちはそうしたことをよく弁えていて、下男や下女が行き来する場には決して姿を表そうとしなかった。

 しかし、監察官たちは違う。彼らは己の職務に必要とあらば、皿洗い場にも王の寝所にも土足で踏み込むことを躊躇わない。黒一色の制服に身を包み、法と規律を盾にあらゆる不正を取り締まるのだ。

 いまの僕がもっとも気をつけなくてはならない相手は彼らだ、とジアンは思っていた。城内の警備を担当する警護騎士らには顔見知りが多いし、そうでなかったとしても、階級としては自分の方が上だ。なんとでも云い包めることができる。

 だが、監察官には階級や身分などは関係がない。ジアンには許されていない場所に立ち入ったと、ただそれだけを理由に彼の身柄を拘束し、尋問し、処罰する権限がある。

 貴族の罪を取り締まる役目を追う彼らであるが、同時に王城の中において発生した犯罪行為については、その実行犯がどのような地位にあれ、その捜査と取調べ、処罰案の書き起こしなどは監察府の管轄である。

 監察官に任じられた者たちはみな一様に職務に忠実で、買収や脅迫などに屈することはない。もともとそうした手段を持たぬ自分だが、いざとなればシャニョンが力を――、否、貸してくれるはずがないか、とジアンはひとり苦笑いした。所詮は使えない駒だったと切り捨てられて終わりだ。

 要するに失敗することはできないということだ、とジアンは気を引き締めてかかる。誰に咎められても、書類を届ける仕事に慣れぬゆえに道に迷ったのだと、そう云い訳する準備はできていた。

 ほとんど人気のない石造りの廊下に、不意に硬い足音が複数響いた。身を強張らせたジアンの背後から迫ってきた彼らは、ずいぶんと急いでいるようで、ほとんどぶつからんばかりにして脇を抜いていく。黒い制服に包まれた背中がふたつ、ジアンに視線を向けることすらなく先の角を曲がっていった。

 ジアンは安堵の息をついた。そうだ、堂々としていればいい、と彼は思った。騎士の制服はその気になってじっくりと眺めでもしない限り、階級の違いがわかりづらい。

 そんなことを考えながら、監察官ふたりが先に曲がった角を折れたときだ。ジアンの視界に、不意に数人の警護騎士と先ほどの監察官らの姿が飛び込んできた。

 彼らは早口でなにごとかを云い交わしあっていて、その内容はほとんど聞き取れない。おまけに彼らは話に夢中になっていて、すぐにはジアンの存在に気づく様子も見せなかった。

 思わずぎくりと足を止めたジアンが、そのままそっと引き返そうとそっと踵を浮かせた、そのときだった。

「ここでなにをしている」

 背後から厳しい声に咎められて、ジアンは声もなく肩を震わせた。

「どこの所属の騎士だ」

 厳しい声に凄味が加わり、強い力で肩を掴まれる。強引に身体の向きを変えられてみれば、そこには大柄な体躯の監察官が険しい表情で不審者を睨み据えていた。

「答えろ」

 下手な云い訳など到底許されるような気配ではない。だが、ここで云い訳できなければ、今夜からの寝床は冷えきった牢の中の硬い石の上になってしまう。

「み、道に迷ったのです……」

 黒一色の制服に身を包んだ監察官は、眉根を寄せただけでなにも答えなかった。あまり多くを語りたくないジアンだったが、仕方なく喋り続ける。

「この書類を監察府長官のお部屋に届けようとしたのですが、なにぶん慣れぬ仕事ゆえ」

「所属と名前は」

「し、小官はなにも……」

 所属と名前、と監察官はもう一度云い、不機嫌そうに鼻を鳴らした。おまえの事情など知るか、とその目が雄弁に語っている。

「西部守備隊将軍配下のギャエル・ジアンと……」

「直属の上官は」

 矢継ぎ早に問われるままに上官の氏名を告げれば、監察官は、このことは報告しておく、と事務的に告げた。

「貴様はここからすぐに立ち去れ」

「あ、あの……」

 くるりと背を向けようとする監察官を呼び止めたジアンは、長官のお部屋は、とおどおどと尋ねた。振り向いた男の顔には迷惑そうな表情がはっきりと浮かんでいる。

 いえ、やっぱり結構です、とジアンは慌てて云った。本当は知っていることをわざと尋ねたのは、さしたる咎めだてもなく解放されそうな予感に、あわよくばもう少しばかりあたりをうろついてみようかと、ささやかな色気を出したためだ。

 注意は受けたが、目的地を見失っていたためにそこらを歩き回る羽目になったのだと、これならばさして違和感のない云い訳になるだろう。

 だが、観察官とは甘くない連中である。

「その書類は俺が預かろう」

 監察官は無骨な掌をジアンに向かってずいと突き出してきた。

「ソラン長官は不在にしておられる。俺は長官付秘書官のセレスタン・ジュヴェだ。責任をもって長官に届けることを約束しよう」

 あ、いや、とジアンは思わず手にしていた封筒を胸に抱え込んだ。

「これをお届けするのは小官の務め。途中で誰かに預けるなど……」

 ジュヴェの双眸が剣呑に撓められた。いかにも不審なジアンの云い訳を粉砕せんと言葉を選ぼうとしたところへ、しかし唐突に邪魔が入った。

「ジュヴェッ! なにをしている!」

 警護騎士となにやら云い交わしていた監察官が、ジアンとジュヴェに向かって大股で歩み寄ってくる。いかにも余裕のない足取りは、単に急いでいるというだけではなく、なにか大事が起きたのだということをあたりに知らしめるようなものだった。

「遅いぞ、なにをしている」

 クザンのやつが、と云いかけたその監察官はジアンの姿に気づくと、すぐに口を閉ざした。ジアンはクザンの名に反応したことを悟られないよう、努めて無表情を装った。

 しばし待て、とジュヴェは云った。

「彼を長官室まで案内してくる」

「誰だ?」

 道に迷ったと云っている、とジュヴェは揶揄のこもった口調で同僚に告げた。

「これ以上歩き回らせるのは不憫だからな」

 つまり、余計なことは見せる気も聞かせる気もないということか、とジアンはジュヴェの意図を正しく読み取り、すぐに色気を引っ込めた。

 クザンの居所はわかった。警護騎士だけではなく、監察府までもがその身柄の安全に細心の注意を払っていることもわかった。シャニョンに報告するには十分だろう。あとは一刻も早くこの場を離脱しなくてはならない。余計な色気を出している場合ではない。ジュヴェが案内してくれるというなら、これより安全な脱出はないではないか。

「お手数をおかけします」

 ジアンは顎先を突き出すようにして会釈し、ジュヴェと同僚の視線から逃れるように下を向いた。書類を確認するように抱え直し、表情を取り繕ってから顔を上げる。

 ジュヴェは同僚に小さく頷いたあと、ジアンをうながして歩きはじめた。ジュヴェ、と彼の同僚が笑いを含んだ声を上げる。

「そいつの上官はまぬけのモルコだ。せいぜい読みやすくわかりやすい報告書を書いてやるんだな」

 その言葉にぎょっとしたのはジアンである。ジアンはジュヴェに向かっては名乗ったが、背後の同僚には所属も氏名も明らかにしていない。にもかかわらず、彼はジアンの素性を過たず把握している。

 ジアンは身体を強張らせたまま、振り返ることもできずにいる。だから、自分の頭上で人の悪い笑みを浮かべたジュヴェの表情には気づくことができなかった。むろん、彼と笑み交わす同僚の鋭い眼差しにも。

「ああ、任せておけよ。俺の報告書は読みやすくてわかりやすいって、まぬけどもにはたいそう評判なんだぜ」

 冗談とも本気ともつかぬジュヴェの返事に、そうだったな、と同僚が笑い声を上げる。まずいことになった、とジアンは硬く拳を握りしめて顔を強張らせた。ジュヴェが書くという報告書が、ただの報告書であるはずがないということは、あえて聞かされるまでもないことだった。

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