最弱冒険者はやがて最強領主に! ~ 経験値100倍スキルで嫁のレベルを上げまくり、ダンジョン攻略も辺境開拓も余裕です。

かわち乃梵天丸

新たなる英雄の目覚め

後の英雄、パーティーを追放される

異世界コメディです。

よろしくお願いします。


※テンプレ通りには話が進みません

※コメディ多め

※変な人が多いです

※いきなり最強ではありません、徐々に強くなります

※恋愛対象はヒロイン一人ではなく、ハーレム要素が有ります


気になる方はお戻りください。


*****


 パーティーリーダーのギルが俺に冷酷に告げた。


「ラーゼル、悪いがお前は今日でクビだ」

「はあ? なんでなんだよ?」

「俺のパーティーのメンバーとトラブルを起こす奴は要らん!」

「トラブルってなんだよ?」

「リンシャにまた絡んで説教したろ」

「待てよ! 俺はチームの為、いやリンシャのことを思って魔法の効率的な使い方を指導しただけだぞ!」


 なんでこんなことになったのか……。


 リンシャの魔法の使い方はとにかく荒かった。

 魔法使いはMPが命みたいなもの。

 いや、魔法使いだけで済む話ではない。

 パーティー全員の命と効率が魔法使いのMPの使い方にかかっている。

 冒険者ギルドの受付嬢のラネットさんにもMP消費効率を意識しない魔法使いは駄目だと言われた。

 そこでリンシャに指導をしたんだが……。


 リンシャは俺の忠告を無視して敵の残りHPを考えずただひたすら魔法を連発している。

 このレベルだと魔法使いの方が前衛よりも一発の火力が強い。

 魔法使いがパーティーを支えていると勘違いするのも当然だろう。

 初心者にありがちな行動である。

 慣れた魔法使いなら敵が死にそうになっていたら魔法で攻撃をせずにMPを温存し、前衛に止めを任し自分はMPの回復をするのがパーティー戦闘での魔法使いの役割のセオリーだ。


 でもリンシャは違った。

 まるで敵の止めを刺すのを楽しむかのように、MP効率を一切考えずに敵が死ぬまで大魔法を連発する。

 毎回オーバーキルの連発でリンシャのMPが尽き、MP回復の為に狩りが中断することも多い。

 あまりにもMPの使い方が雑なので先輩冒険者としてMP回復薬のマナゲインを与えながらちょっと注意したらリンシャが涙ぐんでしまった。

 それを見ていたパーティーリーダーのギルがキレて俺にクビの宣告を言い渡したのだ。


「なんでクビなんだよ? 今まで一緒に頑張って来たじゃないか!」

「教えてやろうか?」


 ギルは顎をしゃくり俺を指さす。

 こんな態度はパーティーメンバーに取っていい態度ではない。

 しかもギルは俺よりも一回り近く歳下である。


「ラーゼルはベテラン冒険者という売り込みでパーティーに入ってきたのに使い物にならないぐらい弱いからだ!」


 弱いと歳下に弱いとバカにされる俺。

 事実である。

 何も言い返せなかった。

 自分でも情けないと思う。


 ギルは今年16歳の成人となり、2か月前に冒険者を始めたばかりだ。

 そんな初心者冒険者に10年以上の経験を持つ俺はクビをいい渡れたのだ。

 ギルに続いてリンシャも俺を非難する。


「そうよ、そうよ! ラーゼルは口うるさいくせに弱すぎるわ! なんで熟練冒険者という触れ込みだったのに初心者パーティーの中で最弱なのよ」


 リンシャもギルの肩を持って俺を非難する。。

 このパーティーの中で俺が最弱なのも事実である。


 そういえばリンシャはつい最近ギルの彼女になったらしいな。

 俺がこのパーティーに入った頃、リンシャは一番簡単な火魔法のフリントさえろくに使えなかった。

 俺の指導で魔法を使えるようになった恩を完全に忘れてやがる。

 戦士のスピンもリンシャに続く。


「偉そうなことばかり語るおっさんの癖にここまで弱いとは笑っちまうぜ!」


 パーティーメンバーたちは次々に俺のことを弱いとののしる。

 俺は必死に言い訳をする。


「冒険者は攻撃力がすべてじゃない!」


 それを聞いたギルたちは顔を真っ赤にして息が止まりそうなぐらい笑う。


「じゃあ聞くがな、冒険者にとって攻撃力以外に何が必要だというんだよ?」


 俺は持論を語る。


「立ち回りとか、アイテムを使った戦闘補助とか……。今回のMP効率の話も重要な立ち回りの一つだ!」

「その立ち回りってなんだよ?」


 そんなことも知らないのかよ?

 初心者丸出しじゃないか。

 俺は諭すようにギルの目を見つめた。


「自分の能力を最大限に活用し、敵の攻撃を受けずに敵にダメージを与えることだ」


 それを聞いたギルは再び笑う。


「敵にかすり傷しか付けられないような弱い攻撃で立ち回りも糞も無いだろ!」

「殴られれば一発で気絶するような奴がなにを偉そうに語ってるんだ?」

「それにね、あんたは薬品で回復役も出来るって売り込みだったから仲間にしてあげたけど、アイテムを使いまくるから経費で報酬がすごく減ってるの知ってる?」


 俺の存在価値を完全否定だ。

 ギルドの依頼をこなせずに冒険者を引退しようとしていたギルを救ったのは俺だ。

 冒険者の立ち回りの基礎の基礎から教えて、依頼をこなせるように育ててやったんだ。

 俺がギルとリンシャとスピンを育てたと言って過言ではない。

 それなのに……俺から盗める技術を盗んだらお払い箱なのかよ?


 スピンが胸糞悪そうな目で俺を睨む。


「このおっさんが弱い理由を知ってるぜ。ここ10年以上、レベルが15からずっと上がってないんだぜ。そりゃ弱いはずだわ。冒険者ギルド最弱の口うるさいだけのおっさんだもんな。俺たちはとんでもない貧乏くじの引いてしまったぜ」

「レベルが15から上がらないって超うけるんですけど! どうりで弱過ぎね!」


 事実なので、なにも言い返せない。


「あー、それなら俺も酒場でベテラン冒険者が噂していたのを聞いたぜ。なんでもラーゼルは普通のパーティーでは相手にされないから、初心者冒険者パーティーに潜り込んでなんとか食いつないでいるので有名なへっぽこ冒険者だそうだ」


 それも事実。

 ベテラン冒険者のパーティーはレベル15の俺を相手にもしてくれない。


「ラーゼルのおっさんには『初心者教育係』って二つ名があるらしいな。でも、今日から新しい二つ名を名乗れよ。『初心者寄生係』、これの方がおっさんに向いてるぞ!」

「あははははは! 超うける!」

「そりゃいいや!」


 結局、俺はなにも言い返せなかった。

 だって、言っていることは全て本当だ。

 レベルがたったの15でカンストしているのは本当。

 ギルドじゃ弱いのが知れ渡っているから、入れてくれるパーティーが無いのも本当。

 右も左も知らない初心者パーティーに『冒険者歴10年以上のベテラン冒険者』として売り込んでやっと入れて貰えるぐらいだ。

 ギルとパーティーを組んだ最初の頃こそ俺の方が強かったけど、すぐにレベルを追い抜かされて今ではギルの方が2つもレベルが上で当然強い。

 俺としてはそのレベル差をカバー出来るように、回復薬をばら撒き回復役の代わりをし、敵のターゲットを散らしてサブの盾役の真似事をし、必死に立ち回って来たつもりなんだけど理解されなかったみたいだ。


 完全なお荷物。


 そう思われてしまったようだ。

 俺一人を残し立ち去るメンバーたち。

 このパーティーに俺の居場所はもうないようだ。


 これ以上、このパーティーに縋り付いても仕方がない。

 俺は解雇処分を甘んじて受け入れた。

 

 *


 その夜のギルド酒場。


 俺は仕事の終わった受付嬢のラネットさんにくだを巻いていた。

 人のあまり来ない壁際が俺たちの指定席だ。

 もちろん飲み代は俺持ち。

 でないと、こんな美人な女の人が一緒に飲んでくれる訳もない。


 なんで美人受付嬢と飲んでいるのか不思議に思う人もいるかもしれない。

 実際、不思議に思った冒険者のおっさんたちの視線が俺の背中に刺さる。


 出会いのきっかけは簡単なことだ。

 三年前のとある日、入るパーティーが無くてギルドの掲示板前で暇をしていた俺の前に現れた新人受付嬢のラネットさん。

 彼女は冒険者を辞めて受付嬢になった新人なのである。

 歳は俺に近かったが常に前線で戦うだけだったラネットさんはパーティーメンバーにギルド関係の手続きを全て任せていたみたいで、ギルドの手続き関係の仕事のことはあんまりわからなかったみたいだ。

 俺が色々と親切に教えてやったので、いまでもこうして一緒に酒を飲むぐらいの付き合いをしてくれるぐらいの仲になった。

 そして俺の唯一の飲み友達だ。

 ちなみに俺に男友達は一人もいないので、唯一の友達でもある。

 俺はしくしくと泣きながらくだを巻く。


「またパーティーをクビになってしまいました。今回こそはいけると思ったんですけどね……」

「今回『も』早かったんですね」


 『も』の所にやたら力が入っていて辛い。

 今年に入って2回目の追放だしな。

 今回の追放はかなり穏便な方だ。

 かなり前に入った女の子パーティーの時は酷かった。

 『ルナータ』という女の子のリーダーは俺が追放されるのをごねると、セクハラおやじ呼ばわりした挙句『ファイヤ・ボール』を連射してきて焼き殺されそうになったぐらいだ。


 ラネットさんは俺をなだめる。


「人には適材適所というものがあるんですよ」


 それって……。

 慰めてるように聞こえて強烈なダメ出し。

 俺には冒険者が向いていないといい捨てられた。


「冒険者としてやる気と技能が有ったとしても、レベルが15じゃなにも出来ないですからね」


 言っていることは正しい。

 冒険者なんてレベルがすべての世界だ。

 レベルが15から上がらない俺は冒険者としては向いてないと思う。

 俺もそろそろ引退すべき時期だとはわかっているんだ。

 でもな、ここまでストレートに指摘されるとあらがいたくなるのが男だ。


「もう少しだけ頑張ってみますよ。なにかの間違いでレベル上限が上がるなんてことがあるかもしれないですしね」

「そうなったらいいですね」


 絶対にレベル上限が上がると思っていないのか、もの凄い棒読みセリフで応援された。

 ちくしょー。


「メンバーを募集してそうなパーティを見つけたらまた声を掛けてください」

「わかりました、すぐには見つからないと思うので気軽に待っていてくださいね」


 ラネットさんはあまり期待出来そうもない声で俺を応援してくれた。

 全くの役立たずなことぐらい、自分でもわかってるんだよ。

 でも、でも……俺は……。

 まだ本気を出せてないだけ……。

 俺は宿に戻ると枕を涙で濡らしながら寝たのだった。

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