後の領主、合同依頼を受ける。
合同依頼を受けることになった俺たち。
マンイータの中でわけわかんないぐらい強いスケルトンの軍団と戦い生き延びた俺たちである。
ゴブリン程度なら束になって掛かって来ても今の俺たちなら1パーティーだけでも余裕。
むしろ俺一人でもいける気がする。
でも依頼書の募集人数は10人以上20人未満ということで、他のパーティーと合同で依頼を受けることとなった。
合同するのは新人を卒業して間もない中堅パーティー。
まだ2年の経験しかないらしい男3人女3人のパーティーだ。
こちらは俺とベランさん、メイミーとモニカとビアンカ、そしてレベル上げのメインとなるコットンさんを含めた合計6人。
合計12人で依頼を受けることになった。
最初は「もう少し人数を増やしませんか?」としきりに不安がっていた向こうのリーダーだけど、後からやって来たベランさんの余裕満々な態度を見て不安も消え失せたようだ。
ちょっと弱気なリーダー。
だけど、勢いだけで突っ込んでいくよりも慎重な方がリーダーとしては向いていると思う。
向こうのパーティーに若い女の子が多いのを知ったメイミーは俺の腕にがっしりつかまり彼女アピールを始めた。
「ごしゅじんさま、かわいい女の子が多くても浮気しちゃダメですよ」
「メイミーがいるのに浮気をするわけがないじゃないか。あははは」
そういいながら嫁を4人も作った浮気者ですまん。
メンバー紹介はリーダーからすることになった。
まずは経験の長い冒険者であり、リーダーの俺からだ。
「チーム名は……なんだっけ?」
ぐはっ!
いきなり話がつまずいて恥ずかしい……。
チーム名を付けるのを思いっきり忘れてた。
それ以前にチーム申請してないぞ。
まあチームを申請してもチームに名声ポイントが入るだけだからどうでもいいか。
名声ポイントなんて集めてもエンブレム貰えたりギルドハウスという名の小屋を貰えたりするだけだか、まあいらん。
ここは適当にチーム名を名乗るか。
そこにモニカが!
「チーム名は『モニカとゆかいな仲間たち』だ」
「ちょっ!」
やめろ!
そのチーム名は絶対にない。
俺が『愉快なメンバー』になってしまうじゃないか。
ビアンカも猛反対だ。
「モーちゃん、それはないよ」
「ダメか?」
「リーダーがラーゼルさんなんだから『ゆかいなラーゼルさんと嫁たち』にしようよ」
ちょっ!
ちょっ、ちょーい!
まてや!
もっと酷くなってるし!
向こうのチームの人たちの目が点になってるぞ。
「『やさしくてかっこいいごしゅじんラーゼルさまと嫁たち』がいいです」
さすがにそれは恥ずかしすぎるぞ、メイミー。
何か活躍するたびにギルドでそのチーム名で呼ばれるんだぞ。
新たな二つ名が付くのが確定のコースじゃないか。
結局、リーダーの強権発動により『アルティヌス領警備隊』にした。
自己紹介を続ける。
「俺がリーダーのラーゼル。得意武器は片手剣だ! よろしく!」
よし!
かっこよくきまった!
うんうん、これなら先輩冒険者の威厳も……その前の流れで威厳もへったくれもないわな。
続いてベランさんが自己紹介。
「俺はベラン。武器は大体使いこなせる。冒険者生活の長いおっさんなので、わからないことが有ったら何でも聞いてくれ」
渋く、そつなくまとめたベランさん。
ちょっとかっこいい。
続いてメイミーたちも自己紹介を始める。
「私はメイミー、僧侶です。得意武器は弓です。それとリーダーのラーゼルさんの嫁です」
僧侶の得意武器が弓と聞いてポカンとする向こうのチームのメンバーたち。
うん、普通は僧侶が弓とかわけわかんないよね。
俺が既婚であることをアピールして女の子から誘惑されないようにけん制をするのを忘れない。
続いてはモニカ。
この前冒険者を始めたばかりなのに胸を張っての自己紹介。
なぜか貫録を感じる。
「私はモニカ。得意なのは大食いだ! 挑戦はいつでも受けるぞ!」
モニカに至ってはジョブ説明すらしてない。
まあドラゴンであることをカミングアウトしなかっただけマシか。
「ビアンカです。魔法使いで得意武器は杖です。よろしくお願いします」
モニカに比べると無難に済ませた自己紹介のビアンカ。
魔法使いなんだけど、モニカの影響なのか『詠唱してたら間に合わない』とスケルトンを杖で殴り倒す武闘派だ。
俺たちと付き合っているせいか、いつの間にか知性派から武闘派に転身した。
最後はコットンさんの番だ。
もう少し先に紹介するように俺が紹介しとけばよかったかな?
「サテラの街の冒険者ギルドで受付嬢をしているコットンです。得意武器とかまだない始めたばかりの冒険者ですがよろしくお願いします」
「よろしくー」
「よろしくねっ!」
向こうのチームの女の子から応援の声が上がった。
コットンさんの自己紹介はうまくいったみたい。
今度は相手チームの自己紹介の番だ。
リーダーはひょろっとした男。
たぶん18ぐらいだと思う。
「僕がチーム『銀の
「おうよ」
必死に自己紹介をしている感じが伝わってきて思わず応援してしまった。
次はちょっとがっしりとした男。
たぶんこいつも18ぐらいかな?
リーダーと同い年だと思う。
「俺は実質リーダーの『キャブ』だ。よろしく!」
「リーダーを名乗るなんてキャブ君ひどいよー。僕からリーダーを取り上げたらなにも残らないから」
キャブのリーダー宣言にクランクが泣いている。
「得意武器は両手剣だ!」
取り回しの良さそうなあまり重そうじゃない両手剣持ち。
口調は悪いが、軽めの両手剣を選んでいるところを見ると自分の実力がわかっているらしく好感が持てる。
「私は魔法使いのモース。よろしくね」
「私も魔法使いのモーム。姉のモースとは姉妹よ。よろしくね」
二人は店売りの装備の中で安そうなもので揃えていた。
単純にお金がないのかもしれない。
「僧侶のマイリです、よろしくね」
弓を背負っているメイミーと違ってスティックに小盾のいたって普通な感じの僧侶。
しっかり回復をしてくれそう。
全員の紹介が終わるとクランクが辺りをうかがっている。
「もう一人いるんだけど……。あっ、来たみたいです」
そこにやって来たのは金属鎧を着た大荷物を背負った中年のおっさん。
大慌てで戻って来たのか、息をゼーゼーと切らしている。
「遅れてすまん……って! お、お前は『奈落の胃袋』じゃないか!」
モニカを見て大声を上げたおっさん。
なにその微妙な二つ名。
「誰だ? お前は?」
モニカは覚えてないようだ。
俺もしらんよ、こんなおっさん。
「俺だよ、俺!」
「だから誰だよ?」
「フードを被ってないからわからないか。元フードファイターのグラトニーだ」
「ああ、あの食の細いおっさんか」
食が細い?
俺もおっさんのことを思い出したんだけど、モニカの大食いのレベルがおかしいだけで、グラトニーのおっさんも相当のもんだったぞ。
グラトニーのおっさんも俺と同じ意見だ。
「食が細いって……でも完敗を
モニカと出会って冒険者人生を見つめ直すグラトニーであったが、この出会いが彼の人生をさらにあらぬ方向に向かわせるのは後の話。
冒険者の人生を変えてしまう大食い女王は恐るべし。
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