後の英雄、ドラゴンの元へと戻る
行きと違い帰りは5人で馬車に乗っている。
御者のおっちゃんと俺。
御者のおっちゃんは行きに俺たちを送ってくれた人だ。
さすがに3回も同じ馬車に乗っているので顔見知りになって少しは会話をする仲になっていた。
「日没迄に間に合いそうですか?」
「4頭引きの馬車を用意したので大丈夫ですよ」
自信満々に馬車を操る。
「それに奥さまも乗せていますしね。頑張らせてもらいます」
奥さまと呼ばれたのはボダニカルさん。
クローブの領主であるアレンさんの奥さんだ。
ラネットさんのお母さんでもある。
クローブの住人たちをクレソン迄避難させていたのだ。
「うわわわ! ものすごい揺れなのだ!」
猛烈な速度で飛ばす馬車の揺れに一人騒いでいるのはモニカ。
ただ、行きに乗っていたモニカとは違う。
ドラゴンの雛が人間に
「モーちゃん、立ってるとまた馬車から落ちるよ」
モニカの手を握って座らせようとしてるのはビアンカ。
行きの馬車では竜であるモニカと一体化していた娘だ。
ちなみにモニカは既に2回ほど馬車から落っこちて埃まみれだったりする。
行きと違って客車なのであまり揺れないはずなんだが、どうやったら落ちるのかは謎だ。
御者のおっちゃんの言うように、夕方にはクローブの町に着いた。
約束の時間だったので既にドラゴンが待っていた。
*
ラネットさんとメイミーもドラゴンと一緒に待っていた。
ホッとした顔で俺を見つめる。
「ドラゴンが待ちきれないと、町を破壊しようとしだしたのを必死で止めていたんだ」
時間ギリギリってところだったのか……。
おっちゃんに飛ばしてもらって助かった。
ラネットさんが心配そうに聞いてくる。
「ドラゴンの雛は見つかったんですか?」
「ああ、見つけたさ」
俺はモニカの肩を抱く。
ドラゴンはモニカが人間の姿をしているのを見ると、自分の姿も人間へと変えた。
人間では見たことのないような綺麗な姿だ。
「おお! 我が娘を見つけてくれたんだな」
ドラゴンは娘と再会できたのが嬉しかったのか顔を綻ばせている。
「さあ、娘を私の元へ寄こしなさい」
「それは無理です」
「なんだと! 娘を取引材料にでもしてなにかを要求するつもりか? お前は要求など出来る立場にはないことを理解していないのか?」
そんなことをするわけがない。
俺はモニカを前に立たせた。
「渡せない理由は娘に聞いてみてください」
モニカはドラゴンに向かって頭を下げた。
「お母さま、勝手に巣を出てすいませんでした」
「うむ。家出の件は許す。では巣へと帰ろう」
「お母さま。モニカは帰りたくありません。もうしばらく外の世界にたいのです」
「ドラゴンの掟でそれはならん!」
俺もモニカと共に頭を下げてお願いする。
「そこをなんとかお願いします。モニカはもうしばらくこの世界を見て回りたいそうなんです」
「ならん! 力なき幼きドラゴンが外の世界などを歩けばすぐにさらわれ、その力を悪用されてしまう。だから巣から出ることは認められないのだ!」
モニカは必死にお願いした。
「お母さま、お願いします! ラーゼルたちと別れたくないのです」
「俺からもお願いします!」
俺も必死にお願いをする。
必死さが伝わったのかドラゴンは俺に解決策を提示してきた。
「どうしてもと言うのならば……お前がモニカの旦那になるしかないな」
旦那?
それって結婚しろってことか?
結婚するのは嬉しいが、さすがに産まれたばかりのモニカを嫁にするのはまずいのでは?
でもモニカはそんなことは気にしていいなかった。
「ラーゼル! 私と結婚して欲しい!」
「お、おう?」
モニカから求婚されて結婚することとなった俺。
だたし、とんでもない条件が付いた。
「よかろう。ただし人間がドラゴンを
ドラゴンは強いものを好むとモニカから聞いたが、ここまでだとは。
でも、それって……。
「戦いで私に勝たねば認めぬ!」
俺がドラゴンと戦うだと?
雄叫び一発で瀕死になってしまう俺がドラゴンに勝てるわけもない。
さすがにこれは無理だと諦めようとしたとき、ラネットさんが期待度満点の顔で俺を応援する。
「私に勝ったラーゼルさんだ。ドラゴンごときに負けるわけもないわ。絶対に勝てるわよ!」
「そうです。ごしゅじんさまは強いのです!」
メイミーも俺のことを応援してくれる。
それを聞いたドラゴンは大笑いをした。
「ドラゴンに勝てる人間だと? お前の仲間は面白いことを言うな! まあよい。戦えばすぐにわかることだ。お前たち全員束で掛かってこい!」
モニカの母親は竜の姿に戻り、俺に襲い掛かろうとした。
それをモニカが間に入って止める。
「お母さま、長旅で疲れているラーゼルに勝っても意味がありません。旅の疲れが癒されるまで時間をください」
「ヨカロウ。明日ノコノ時間二マタ来ル。人間相手ナノデ、ハンデモヤロウ。コノ私ヲ
ドラゴンはそう言うとはばたき大空へと消えていった。
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