第8章 逆戻り編
第40話 初恋の人に出会った意味
俺は激痛のあまり飛び起きた。
そして起きた瞬間に不思議と激痛は治まったが、何か違和感を感じる。
えっ? ちょっと待てよ……
布団で寝ていたはずの俺が今はベットの上に居るのだ。
ここは病院なのか? 俺は入院しているのか?
一瞬そう思った俺だが壁に貼っている見覚えのあるポスターを見て理解した。
そして愕然とした……
ここは紛れもなく俺の部屋だ。
それも『過去の世界』の俺の部屋……
一番恐れていた事が......
「うわぁぁあああ――――――――――――――――――っ!!!!」
俺は叫んだ。
何とも言いようが無いこの現実に叫ぶしかなかった。
トントントントン……
慌てて階段を上る音がする。
バンッ!!
「どっ、どうしたの隆!? 何があったの!?」
母さんが俺の叫び声に驚いて慌てて部屋に入って来たが、俺はそんな母さんに『あの世界』で初めて母さんに対して口にした『真逆の言葉』を言ってしまう。
「か、母さん……老けたね……」
「隆!! アンタが急に叫び声をあげたから心配して部屋に来たのに、いきなり母さんの顔を見て『母さん老けたね』って何よ!? 母さんが老けるのは当たり前でしょ!? アンタ今年で五十歳なのよ!! 母親の私が老けるのは当然じゃないの!!」
俺は母さんに怒鳴られたお陰で冷静を取り戻す事が出来た。
「か、母さん、ゴメン……そして有難う……」
「へっ? アンタにお礼を言われる事なんて何も無いわよ。どうせ今の時間までずっと寝ていて寝ぼけていたんでしょ!? もういいわ!! 朝ごはんテーブルの上に置いてあるからサッサと起きて食べてちょうだい!!」
母さんはそう言い残すと台所に戻って行った。
「はぁぁぁ……」
俺は大きなため息をついた。
これが現実なのか?
俺はずっと長い夢を見ていたのか?
それとも再び『タイムリープ』をして『この世界』に戻って来てしまったのか?
一つ言える事は俺の記憶の中に『あの世界』での五年間の出来事がしっかりと残っているという事だ。
石田とのキスの感触もしっかりと覚えている。
そう、ついさっきまでこの部屋に石田が居たんだ。
そして俺は病気が治ったら『つねちゃん』に会いに行こうと思っていたんだ。
それなのに……
「つねちゃん……」
俺の目から涙が溢れてくる……
『この世界』には『つねちゃん』はもういない。
そして『石田』もいないんだ……
帰りたい……戻りたい……もう一度会いたい……
俺は枕元に置いてあるスマホにタッチをする。
そして画面に出て来た日付を確認したが、今日は『2020年3月24日』……
『つねちゃん』の告別式の次の日
そう、俺が慌てて志保姉ちゃんの家に行った日だ。
そして俺が『あの世界』に『タイムリープ』した日でもあり、日にちだけ言えば、『つねちゃん』と駅のプラットフォームで別れの際に『一度目のプロポーズ』をした日でもある。
何故、俺は『この世界』に戻って来たんだろう……
というか、結局『この世界』に戻ってしまうなら何故わざわざ俺は『あの世界』に『タイムリープ』したんだ?
何故、『つねちゃん』とあんなに親しく出来るところまで……何故、俺をそこまで喜ばせるだけ喜ばせて……
何故、俺が『寿』や『石田』に告白されるところまで……
何か意味があるのか? 何か理由があるのか!?
五年だぞっ!!
俺は『あの世界』に五年もの間、過ごしていたんだぞっ!!
考えれば考えるほど頭が痛くなるが、残念ながら『あの痛み』程ではない。
出来る事なら『あの痛み』にもう一回なって、もう一度『タイムリープ』をして『あの世界』に何とかして戻りたい……
でもおそらく、そう簡単に『あの世界』には戻れないんだろうな。
俺は何となくそう思う。
だったらせめて『つねちゃん』の『告別式』の前の日にでも戻って来たかった……
それなら『告別式』に参列出来たし、『つねちゃん』の最後の顔が見れたのに……
『永遠に眠っているいつねちゃん』の顔でもいい、一目見たかった……
俺はこれからどうすればいいのだろうか?
引き続き『ニート』の『引きこもり』生活を送るのか?
それとも五十歳を前にして前向きに一からやり直すのか?
そんな事が今の俺に出来るのか?
いや出来る……
俺は『あの世界』で『つねちゃん』に会う為に、『つねちゃん』に認めてもらえる男になる為に必死に頑張ったじゃないか!!
そしてあともう少しで結果が得られるところまでいったじゃないか!!
だから『この世界』での俺も出来るはずだ!!
『中身』は一緒なんだから……
最後まで頑張れ、俺!!
俺は『この世界』でも『つねちゃん』に認めてもらえる様な男にならなければならないんだ。たとえ『この世界』に『つねちゃん』が居なくても……
まずは『ハローワーク』に行って職を探そう……
いや、でもその前に行っておきたい所がある。
ただ、そこに行くにはまず志保姉ちゃんに会わなければならない。
俺は遅めの朝食をサッサと済ませ、志保姉ちゃんの家に向かうのであった。
――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
『過去の世界』に『逆戻り』してしまった隆......
色々と心の葛藤が有る中、冷静を取り戻し改めて『この世界』で生きて行く決意をする。
しかし隆は一つだけ行きたい所が......
その為には志保のところに行かないといけないらしい。
果たして隆は志保に何を聞きに行くのでしょうか?
どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます