破壊の創造者 外伝 戦いの記憶

ナディア・グリマルディ《Alice》

第1話 【シャロン】失われた王を求めて

時は竜世紀520年。西暦で言い替えれば2560年にあたる。4月のことだった。

外は暑くも寒くもなく適当な気温で、過ごしやすい環境だった。

第792の世界┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

第9の世界を起源とする複数の世界線のうちの1つである。

国家は12種族がそれぞれ暮らしやすいように国土を分断されている。自然境界ではなく人為的な境界で隔てられている。

過去に人類と最初に現われた竜族を起点とし、世界大戦が繰り返し行われ、破滅の危機に何度も陥ったが、12種族はお互いの過ごしやすい距離で干渉、不干渉を決めていた。

国際全種族連盟の名のもとに国家間の代理戦争という形で2年に1度開催されるゴッデスファイト。これにより国の今後の命運が決まる。短期間に開催されるため、前回負けた国にもチャンスがある仕組みに見える。しかし、それは表向きで実際にはトラップなどを即時に配置し、搾取される国とそうでない国に分け隔てられていた。これが新たな国家間での戦争の火種になっていた。これが原因で分裂状態になった国の代表的な存在として日本が挙げられる。この国は竜人至上主義を掲げる大日本竜人帝国と人間至上主義を掲げる大日本人民皇国、竜人と人間の共存共栄を掲げる大極東王国に分かれていた。

いずれの国もゴッデスファイトに負け続け、大日本竜人帝国は富国強兵を掲げ、拡大主義に走った。大日本人民皇国は閉鎖経済で、孤立化していた。大極東王国は一寸先は闇な状況の打破に苦しんでいた。

そんな国の未来の女王として名を轟かせるとして期待されている人物がいた。シャロン王女である。天才的な才覚の持ち主で竜人化手術を進んで受け、100の能力を持つ竜人として君臨している。


「この国の現状打破には労働者階級による闘争と日本統一が必要だ。」


「暴力的革命も視野に入れる必要がある。」


「その革命の地盤にはゴッデスファイトをこの世から無くす必要がある。」


彼女はこの国の打破として現実味のある計画をいくつか立てていたが、どれも実現にまで及ばなかった。理由として、ゴッデスファイトを無くすにはゴッデスファイトのボーナスである自分の国以外の選手の殲滅をする必要があるが、参加資格がある者からそれができる者が見当たらない。

そんな絶望的な状況の中、ある文献を見つける。

「[失われた王]か。これには期待出来るかもしれない。私はこの国を変えるにはこの力が必要かもしれないと思う。」


「そんな眉唾物の話に興味を抱く必要はない。」


シャロンを制止するのはロイヤルガード隊長かつ陸軍戦士長のアグノだった。


しかし、

「いえいえ。第9の世界に行けば必ず見つかります。失われた王はそこにいるのです。このザクトがご案内致します。死者蘇生の能力者を創り出し、失われた王を復活させる。それにより、第9の世界を統治させるのです。それに成功すればやがてはこの第792番目の世界をも平定できます。」


妖術師ザクトはアメをシャロンに与える。


「革命によるモデルを第9の世界で実現させるのだな。それに成功すればこの世界も平和を取り戻せるのだろうか。」


シャロンは決心をした。第9の世界で失われた王を復活させると。


「シャロン様考え直してください。失われた王なんて虚構を信じるのではなく、この世界において現実的な活動をするべきでは?」


アロンも制止する。


「暴力革命モデルになる世界が必要なのだ。いきなりここで試す必要はなかろう。それに百聞は一見にしかず。失われた王を一目見てみるべきだ。」


「シャロン様、厳しいことを言いますが、この世界にこそあなたが必要。あなた様が女王になってから国政を管理すればいいものです。今はまだ準備期間と捉えるべきです。どうか考え直してください。」


マリーネも制止する。


「私は生き急いでるのかもしれないが、今手の打てる状況のうちに手を打たなければならないのは変わらないと思うのだが?待つより行動起こせだよ。」


こうして幾多の反対意見を無視して、シャロンはザクトに導かれるまま第9の世界へ旅たった。




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