第345話気づき
クリスはハルジオンと屋敷に戻ってくると…
「すみません!誰かー」
屋敷に向かって声をかけた!
「あれ?クリス様、早いお帰りですね」
スチュアートがクリスの声に迎えにあがると…
「ハルジオンさん!?クリス様何があったのですか!」
「あっ…ちょっと馬が暴走してしまって…ハルジオンがびっくりして気を失っちゃったんですが怪我はないと思います。でも一応大事をとって帰ってきました」
「そうですか…ローズ様達は?」
「そのまま巡回を続けるそうです。まぁ姉さんとカイル様がいるからあっちは大丈夫かと」
「そうですね、あちらは大丈夫そうです。ではハルジオンを降ろしますね」
スチュアートさんが手を伸ばしてハルジオンを抱き寄せようとすると…
「んっ…」
何か引っかかっているようで降ろせない…
「クリス様、何か引っかかってませんか?」
スチュアートがクリスに声をかけてクリスを見上げると…
「え?ど、どうされました!?」
クリスの顔が赤く染っていた。
「あ…あの…ハルジオンが離してくれなくて…」
ボソボソと喋るクリス様の視線の先を見ると…
「ああ、なるほど…」
スチュアートはそれを見て微笑み納得する。
そこにはクリスの服を離すまいとギュッと握りしめてくっついているハルジオンがいた。
「気を失っているのに…わかるのでしょうか」
スチュアートは感心してしまった。
「わ、わかるってなにが?ど、どうしようスチュアートさん…」
クリス様の困った顔にスチュアートは気になって聞いてみた。
「お嫌でしたか?」
「そんな事ない!…です。ただ気がついた時にハルジオンが困るだろうと…好きでもない男にしがみついていたなど…」
クリスの寂しそうな顔にスチュアートは目を見開いた…
「おや…まぁ。そうですね…クリス様はローズ様の弟君でしたね…」
「え?今更なんの事ですか?そりゃ僕は姉さんの弟ですけど…」
「いえ…こちらの話です。えっと…ハルジオンは大丈夫ですよ、幸いここには私達しかいませんし他の人は誰も見ていません。このまま部屋に運んで差し上げれば問題ないですから」
「そ、そうだ…ね」
クリスは複雑な気持ちで頷くと
「とりあえず離れそうもないのでクリス様ハルジオンをだき抱えたまま下りられますか?」
「うん、軽いから問題ない。馬だけ抑えておいてくれますか?」
「はい」
スチュアートは笑って馬の手網を受け取った。
クリスは手が空くと両手でしっかりとハルジオンを抱きしめた、そしてそのまま馬からサッと下りると…
「私は馬を厩舎に置いてきますのでクリス様はハルジオンをお願い出来ますか?」
「わ、わかりました」
「ああ…ハルジオンの部屋はローズ様の隣になっております」
「う、うん…じゃあ運んできます」
クリスは戸惑いながらスチュアートを見ると
「どうかされました?」
クリスの様子に声をかけた。
「な、なんかすごい軽くていい香りがするんですけど…ハルジオンてちゃんとご飯食べてるのかな?」
「ふふ、ええたくさん食べておられますから大丈夫ですよ…」
「そっか…ならよかった」
クリスはほっとすると「じゃあ」と屋敷に入っていった。
「まぁ…クリス様なら大丈夫でしょう」
スチュアートは少し体の強ばったクリスを見て笑いながら初々しい二人を微笑ましく思い、晴れやかな気持ちで馬を置きに向かった。
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