第288話思い

「ちょっと馬に水をやって縛ってくる、ここで待ってて」


カイルはハンカチを地面にひくとローズを座らせた。


「すみません…」


ローズは言われた通りに座るとカイルはそれを見て馬を引いて行った。


離れていくカイルを見つめてローズは思いっきり息を吐いた。


「はぁー!な、なんか緊張する…どうしよう!まともに喋れない!あーバルトどうしよう!」


知るか!


なんだがバルトの幻聴が聞こえる。


「だって私あの時の事思い出しちゃった!カイル様とロイ様に言われた事…」


ローズはバルトがいるつもりで話し出す、そうしないと緊張で変な事を言ってしまいそうになる!


カイル様がいないうちに吐き出してしまいたかった。


「ジュリアさんに言われて思い出したはいいけど…私は結構酷い事していたような…あー!本当にやだ!どうしようとりあえずそれを謝って…あとは私の気持ちを伝えないと…」


ローズがうん!と頷くと


「思い出したって本当か?」


すぐ後ろにカイルが立って話しかけてきた。


「えっ!カイル様!早くないですか!」


「え?ああ…ローズを一人にすると心配だから早めに戻ってきた…ってそんな事より思い出したというのは本当?」


カイルはローズの隣に座った。


「は、はい…」


ローズは頬を染めて頷くと…そのまま下を向く。


「それなら今日その返事を貰えるの?」


カイルが聞くと


「わ、分かりません…なんでカイル様が私をす、好きなのか…だって私達友達だったし…カイル様は女性が苦手だと…」


「ああ、今でも女性は苦手だ。でもローズは好きだ」


「あっ!私は女ではないと!」


ローズが納得すると


「どう見てもローズは可愛い女性だろ?ローズだから好きなんだ…それを教えてくれたのは君だよ」


カイルはローズの手をそっと掴んだ。


「君が女性と一括りにせずに一人の人として見てって言ったんだ」


「私そんな事言いましたっけ?」


「言った」


カイルが笑うと


「でも私剣技や馬が得意で令嬢とはかけ離れていますけど…」


「そこも好きだ。好きな人と一緒に剣を打ち合えるなんて最高だったよ」


「あ…うー」


ローズが言葉に詰まると


「なんでも言って、全て答えて返してあげるから」


カイルがニコリと笑うと


「カイル様…ずるいです…全然女性苦手じゃないじゃないですか…」


ローズは追い詰められて涙を浮かべる。


「これもローズのおかげかな…」


カイルは苦笑しながらローズの涙を指で拭った。


「自分なりに何度もアプローチしたつもりだったけど…君には全然伝わらなくてね、それで思ったよもっとはっきりと言わないといけないんだってね」


「はっきり言い過ぎです…」


ローズがじっと見つめてくるカイルから目を逸らした。


「だってここまで言ってやっと通じた…それがこんなにも嬉しいとは…それで?ローズの気持ちは?君がどんな答えでも俺はそれを受け止めるよ」


「そ、それにロイ様にも…」


「ロイの事は今は忘れて…俺を見て」


カイルはそっとローズの顎に手を添えて、優しく自分の方に振り向かせた。

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