第283話ロイとキャシー

ロイは支度を整えると今日最後のデート相手のキャシーの部屋まで迎えに行った。部屋の前までいき扉をノックするとメイドが出迎えてデートらしい可愛らしい装いに身を包んだキャシーが姿を見せた。


「ロイ王子、本日はよろしくお願い致します」


キャシーが頭を下げると


「ああ、よろしく。長らく待たせてしまって申し訳なかった。今日は楽しもう」


ロイが笑って腕を差し出すと、キャシーはスっと腕をとる。


二人並んで歩き出すと…


「さすがアイリッシュ家のご令嬢だな、所作が綺麗だ」


ロイは感心すると


「王子と同じで幼い頃からそう躾られてきましたから…」


少し寂しそうに笑うと


「ああ…わかるよ」


ロイも幼い頃からの教育を思い出し頷いた。


「それで今日はどうする?行きたい所があるなら付き合うよ」


ロイが笑って聞くと


「そうですね…ならローズと同じコースでお願いします」


「ローズと?それだと庭園でお茶をするだけだが…」


ロイが眉を顰めた。


「ええそれで大丈夫です」


キャシーが笑うと


「君って…そんなだったかな?」


マジマジとキャシーを見つめる。


「ローズと出会って変わったんです」


キャシーは頬を赤らめて微笑んだ。


「あはは…まるで恋する乙女だね…でもその相手は僕と同じかな?」


「ええ…そうかも知れません。ですから王子は今日は気にせずのんびりとなさって下さい。女に恋する女などお嫌でしょうが少しの間、御付き合い下さいね」


キャシーがすまなそうに頭を下げる。


ロイはそんなキャシーを優しく見下ろした…


「嫌なんて事ないよ…君こそその気持ち言えずに辛かったのでは?」


「いえ…元より愛ある結婚など夢のまた夢…こうして好きな人が出来ただけで嬉しいです…それにローズは私の事を本当に大切に親しくしてくれます…ですから私はローズの親友でいようと決めたのです」


「寂しく…ないかい?」


ロイが聞く…まるで自分に問いかけるように…


「寂しい?そんな事ありませんわ、だって一番近くに友達としていつまでも一緒にいれますから」


キャシーはにっこりと笑った。


ロイはその美しい笑みをじっと見つめる…


「俺も君みたいに…思えるかな」


「あら…ロイ王子はまだ諦めるのは早くありませんか?」


キャシーが聞くと


「いや、二人の一番近くにいるからわかる…二人の気持ちが…俺はもういいんだローズには俺の隣は似合わないからね」


ロイが苦笑すると


「確かに…ローズは優しすぎます。国の決断は時として残酷です…きっと心を痛めることが多くなるでしょうね」


「ああ、そんなローズは見たくないからね」


「ふふ…私達似た者同士ですね」


「そのようだ…好きになるものか似てるって事は俺達気が合うんじゃないかな」


「そう…なんですかね?」


キャシーが苦笑すると


「これからお茶を飲みながら好きな物を言い合わないか?どれだけ俺達気が合うか」


「面白そうです」


ロイとキャシーは笑い合いながら庭園をゆっくりと歩き出した。

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